コンビニが「24時間営業」にこだわる意外な理由

え、そんなことだったの!?
加谷 珪一 プロフィール

コンビニは店舗面積が狭いので大型スーパーと比較すると店舗の運営効率が悪い。こうした悪条件をカバーするためには、安値販売を行わずに商品を高く売る必要があった。つい最近までコンビニが定価販売だったことにはこうした背景がある(定価販売のコンビニが普及した分、日本の消費者は高い買い物を強いられ続けることになった)。

また店舗の収益性が低いため、直営店舗だけでは十分な利益を確保することができない。このためフランチャイズ加盟店を広く募集し、場合によっては加盟店に過酷な条件を強いることで本部の利益を維持してきた。コンビニ企業が高収益なのはこうした契約内容によるところが大きい。

 

日本では24時間営業の継続は難しい

市場が拡大している時には、これらのデメリットをメリットが上回っていたので、大きな問題にはならなかった。また一般消費者もコンビニを極めて高く評価しており、「コンビニは日本が生み出した世界に誇るイノベーションだ」といった具合に、手放しでコンビニを賞賛する風潮が強かった。

コンビニの経営方針について批判的な記事をメディアに書くと、運営企業からクレームが来るかと思いきや、読者から尋常ではない反発を受けるケースも多く、コンビニ経営の諸問題を指摘する記事は一種のタブーとされていたのが現実である。

筆者は数年前、(一般ビジネス系媒体ではおそらく初めて)あるメディアにコンビニのフラチャイズ契約の問題について詳しく解説する記事を執筆したことがある。記事について激しいクレームや圧力を受けることはなかったが、何人かの知人には「加谷さん、こんなストレートな記事を書いて大丈夫ですか」と心配された。

わずか数年前でもこうした状況だったことを考えると、ここ1~2年の人手不足とそれに伴うフランチャイズ加盟店の経営環境の悪化、消費者意識の変化はかなりのレベルだと考えられる。今回の実証実験の結果がどうあれ、コンビニ各社が24時間営業について何らかの対応を迫られる可能性は高いだろう。

ちなみに諸外国では24時間営業に対するスタンスは様々である。

ドイツでは宗教上の理由から深夜営業や休日営業について規制する「閉店法」と呼ばれる法律が制定されている。社会主義的な色彩が濃いフランスでは労働者保護という見地から同様の規制があり、小売店の種類によっては深夜や休日に営業できない。

しかしながら、両国とも規制の見直しが進んでおり、24時間営業を実施する店舗が増えている。もともとこうした規制がない米国では営業時間については企業の方針に委ねられてきた。しかしながら各国とも、無理してでも24時間営業を行うという雰囲気ではなく、必要に応じてやればよいという柔軟な風潮といってよい。

先進各国は日本と比較すると生産性が高く、社会にはかなりの余裕がある。経済的な余力が小さい日本の場合、24時間営業を無理に継続すると、過重労働に直結する可能性が高い。今後は経済の実力に合わせた最適な営業時間のあり方について社会全体で模索していく必要があるだろう。