書店員さんが選ぶ「私が好きなブルーバックス」第4回は「情動」!

全国の目利き書店員さんのこの1冊
通巻2090点を超える科学シリーズ「ブルーバックス」で何を読めばいいのでしょうか?
大阪の目利き書店員さんは「こころ」をテーマに大推奨してくださいました。

第4回  小西悠哉(ゆうや)さん
(正和堂書店鶴見店 ビジネス、新書、女性コミック担当)

『「こころ」はいかにして生まれるのか 最新脳科学で解き明かす「情動」(櫻井武)

正和堂書店

3世代に愛される「町の本屋さん」を目指し、色々な事にチャレンジしながら頑張っています!

大阪市鶴見区にある正和堂書店は、2020年で創業50年を迎える、昔ながらの本屋さんです。

書店業界を少しでも盛り上げることができればいいな、という思いもあり、読書が好きな方、どんな本を買おうか悩んでいる方などに向けて、何か喜んでいただくことができないか、日々模索しています。

最初の試みとして、2017年3月よりインスタグラムを始めました。活字離れといわれて久しいですが、まずは様々なジャンルの本を知るきっかけになればいいな、と思っています。

毎日2~3冊の本を紹介し、これまでに約1600冊以上の本を紹介させていただきました。

おかげさまで、4万人を超えるフォロワーの皆様にご覧いただいています。

最近の試みとしては、季節のイベントに合わせたブックカバーを制作しています。お陰様でお客様にも好評をいただき、たくさんのメディアにとりあげていただいて話題にもなりました。

また、大手ランドセルメーカーであるセイバンさんとのコラボレーション企画で、『ママとこどもの本屋さん』を連載し、保護者の方や子どもたちにお勧めの本を紹介させていただいています。

セイバン

ヒトの「こころ」を考える。

「こころ」と言えば夏目漱石を連想する人も多いのではないでしょうか。漱石は『こころ』の広告文で「自己の心を捕らへんと欲す人々に、人間の心を捕らへたる此作物を奨む。」と謳いました。

自信たっぷりに「自分の心を捕らえたいと思っている人たちに、人間の心を捕らえたこの作品を薦める」と発表されたこの作品。100年経った今も、名作として読み継がれています。

「心とは何ぞや」という問いは、長きにわたって人間の興味関心を集めてきました。私たちは、今日もまた、ままならない心に振り回されて生きています。

不安や怖れに脅かされた生を、希望や喜びが支えてくれる──これらの感情は、いったいどこから生まれてくるのでしょうか。

その問いに、最新脳科学から光を当ててくれるのがこの本、『「こころ」はいかにして生まれるのか』。

正和堂書店

神経科学からみた「こころ」のはたらき方という観点から、生体の機能としての「こころ」はどのような仕組みを持っているのか、「こころ」の世界が紐解かれていきます。

形もなく、捉えどころのない「こころ」を、いかに科学的に分析するのか。それは、大脳皮質より、もう少し脳の深部にある構造を明らかにすることに鍵がありました。なぜなら、それが「こころ」の本質に深くかかわる「情動」を作っているからです。

「こころ」の働き方である情動のしくみを明らかにするために、脳科学者たちは途方のない挑戦を繰り返します。きわめてフィジカルな脳科学が、カタチのない「こころ」の姿を求めていく軌跡は、ひとつひとつが驚くほど文学的な物語を孕んでいます。

そしてまた、膨大な実験の数々からは、「こころ」に対する人間の飽くなき探求心がまざまざと伝わります。

確かに本書の内容は、脳のつくりやホルモン、大脳皮質の高度な処理システムや認知の話など、専門的なことも多く、すべてを理解することは難しく思います。しかし、各章の最後にはコンパクトなまとめが置かれているので、それをよすがにして、内容を確認しながら読み進めることができます。

すると、「つり橋効果」や「パブロフの犬」など耳に覚えのある実験の話やトラウマのしくみ、日本と西洋の顔文字にみられる認識の差や、歴史の中で「こころ」がどこにあると考えてきたかを比べるなど、文化的・社会的な話題もあって、なかなか楽しめます。

特に印象に残ったのは「おそるべき報酬系」の章です。