K-POP三大事務所の時価総額がavexやアミューズを超えた理由

株式市場でのK-POPの評価は?
飯田 一史 プロフィール

JYPはなぜ「新社屋」を建てたか

本連載の第3回では肯定的に評価したが、SMの「CT理論」(文化が先、経済は後)は、大言壮語をブチあげることで、ムダの多い先行投資を正当化するためにも使われてしまうという半面も持っている。

対してJYPはスリムに効率性を追求してきたと言える。

ところがJYPは、2017年に有形固定資産が247億3700万ウォンと、前年の100倍くらいに突然増えている。

これはなにゆえか? キャッシュフロー計算書を見ると2016年にフリーキャッシュフローが153億8000万ウォンと爆増している。これはTWICEが2015年10月にデビューし、即ブレイクしたことを考えると、大半はTWICEの稼ぎだろう。

そして投資家から「その現金ブタ積みして遊ばせるんじゃねえだろうな。そんなことするなら配当しろ」と突っ込まれかねないところで、上場以来初めてとなる固定負債(長期借入)を50億8100万ウォン入れて財務レバレッジを効かせつつ、新社屋その他に投資をしたということだろう。新社屋建設費は200億ウォンと言われており、数字的につじつまが合う。

 

少し先走ったので説明をしよう。まず「現金ブタ積み(B/S上に現預金を大量に抱えておくこと)がよくない」とはどういうことか。投資家が経営者に期待するのは、自分たちが托したお金を増やしてくれることである。

したがって、企業が単に現金をいくら抱えていても、そこからお金を増やすことに使ってくれないのなら意味がない。企業に手元現金がたくさんあるだけでは投資家は何も嬉しくない。そのお金を使って、もっと稼いでくれることを期待する。

では「株主に配当する」とはどういうことか。配当が多い方が良い会社、毎期配当する会社が良い会社だと思っている人が世の中には少なからず存在する(もちろん、何をもって「良い」と考えるかはその人の価値観次第ではある)。だが、配当とは、企業が持っている現金を投資家に還元する(配る)、ということである。

しかしそもそもは、先ほども言ったとおり、投資家は投資したお金がもっと大きくなる(企業価値が増える)ことを期待するからこそ、お金を托す。そのお金が戻ってくるのが配当である。「え、戻ってくるならいいんじゃないの?」と思ったかもしれない。

企業が持っている現金を最大限に使って、その投じた現金以上に稼げるのであれば、事業にお金を回した方が利益は出る。そのはずのお金を投資家に戻すということは、イコール「事業には使い道がありませんので、その分のお金を投資家のみなさんに配ります」というメッセージを発信していることに等しい。

だから配当の額が大きい会社、毎期ガンガン配当している会社というのは「現金がたくさんあってもうちの会社は成長できるわけではない。だから事業に使い道のないこのたくさんのお金は投資家にお戻しします」と言っている会社、「そんなに成長できません」と公言している会社、と見られてしまうのだ。

つまりJYPがTWICEで稼いだお金で新しい社屋を建てたことは、投資家に対して「この新しい設備を使って、これまで以上に稼いでみせます」とアピールしたということだ。もし現金をただダブつかせて大型投資をしなかったならば「JYPはこれ以上、成長する気がないんだ」と投資家は判断し、「じゃあ、その余ってる現金、配当して戻してちょうだいな」と要求するか、あるいは「成長しないなら株を売ってもっと伸びそうな会社に投資しよう」と考えたことだろう。