K-POP三大事務所の時価総額がavexやアミューズを超えた理由

株式市場でのK-POPの評価は?

「K-POP産業」はいったいどれくらいの規模なのか? 大手事務所の経営は順調なのか? 株式市場からはどう評価されているか? 本連載では、その実態をファクトと数字に基づいて解き明かす。

 

K-POP事務所「株式市場の評価」

今回は視点を変えて、K-POP関係で上場している事務所の株価や経営状況を見てみよう。日本では2017年以降、TWICEとBTSを代表格に「第三次韓流ブーム」と言われているから、各社さぞ経営状況はよく、株価は爆上がりして時価総額が膨らんでいるのだろうと思うかもしれない。

しかし、各社のチャートを見るかぎり、世界が「江南スタイル」に沸いていた2012年の方がよほど「過熱」していたと言える。SMやYGも長期トレンドで見るとここ2、3年は堅調に株価が伸びていたといった感じであり(ただしYGは後述するバーニングサン事件により19年3月現在は急落中)、“爆発的”に伸びたのはJYPとCubeだけだ(もっとも、JYPは上場直後からしばらくあまりに高い株価が付いていたため、「時価総額」は過去最高ながら「株価」は過去最高にはほど遠い)。

SM Entertainmentの株価チャート((The Wall Street Journalより、2019年3月初旬時点)
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YG Entertainmentの株価チャート(同上)
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JYP Entertainmentの株価チャート(同上)
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FNC Entertainmentの株価チャート(同上)
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Fantagioの株価チャート(同上)
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Cube Entertainmentの株価チャート(同上)
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株式市場ではなくメディアに目を向けると、輸出額の推移を見れば実際には着実に拡大していると言うほかないにもかかわらず、「朝鮮日報」などの韓国メディアには、「韓流」「K-POP」という言葉が誕生して以来、定期的に悲観論が掲載されている。

たとえば「朝鮮日報」だけでも、

「バブルはじけた韓流観光」2006年3月23日
「行き詰まる『韓流』、進化する『日流』(上)」2007年12月10日
「韓国ドラマが競争力を失った理由」2008年12月25日
「韓流下火の原因はテレビ局の著作権独占」2009年10月13日
「中国式に考えなければ韓流ブーム続かない」2010年5月17日
「中国市場で稼げない韓流コンテンツ(上)」2011年6月5日
「韓流アイドル育成システムの見直しを」2012年4月15日
「円安と反韓流、韓国食品の対日輸出が減少」2013年3月8日
「『外華内貧』のK-POP」2015年8月8日
「『韓流』の今後を心配する海外の友人たち」2016年11月13日
「韓国のイメージ、K-POP以外にあるのか」2018年6月24日

といった具合だ。

少女時代やKARAがブームになっていた2011年以後、同年8月に起きたフジテレビ抗議デモや、2012年の李明博大統領の竹島上陸によって日韓関係が悪化し、日本のマスメディアからK-POPが閉め出された。代わって中国市場が伸びてきた――と思いきや、2016年にTHAAD配備問題が起きて中国では韓流コンテンツが閉め出され、中国企業から韓国企業への資本流入も一時ストップ。2014年にはタイとの関係悪化により、やはり大幅に売上ダウンしている。

 

このように外交問題に売上が左右されてきた歴史を見れば、投資家が簡単には浮き足立たないのも無理はない。

……と思うかもしれないが、それ以前に、各事務所の財務を見れば株価がぼちぼちでしかない理由はわかる(と言っても筆者は株の専門家ではなく、通り一遍の財務分析しかできないが)。

まず、SM、YG、JYPの三大事務所以外の大手であるFNC、Fantagio、Cubeから見てみよう。

THE WALL STREET JOURNAL (https://quotes.wsj.com/)掲載の数値を元に2018年9月作成
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2017年までの数年間の財務を見ると、FNCは売上は伸ばしているが、Fantagio、Cubeは売上すら伸びていない。FNC、Fantagioは当期純利益が2年連続、Cubeは3年連続マイナス。このあたりがマイナスでは、株式市場から高く評価されなくても仕方がない。もちろん、かつてのAmazon.comのように、意志を持ってアグレッシブに先行投資しているがゆえの赤字ならば話は別だろうが、この3社に関してはそういう話でもない。

ではなぜ2019年初頭からCubeの株価が爆上がりしているかと言えば、2018年の業績の速報が出て、売上が大幅伸長、利益も黒字転換したことがわかったからだ(不明な点があるため、上記の表には2018年分の情報は入れていない。なお本稿は基本的に2018年11月に執筆したものをベースとし、今回の記事アップに際して部分的に情報を修正している)。