# 経営者

弱冠24歳で「遺伝子解析」の会社を作った、若き女性研究者の挑戦

ジーンクエスト・高橋祥子社長に聞く
夏目 幸明 プロフィール

病気を未然に防ぐ時代がやってくる

起業後、経営者として最も大きかった学びは、苦手なことを「できない」と認められるようになったことです。最初は、何かできないことがあると自分の能力不足だと思い、自分を責めていました。すると周囲に対して厳しくなってしまう上に、自分が苦手な作業をする機会が増えるのです。

普段気をつけていることは、自分や相手が論理的に話しているのか、主観や感情で話しているのか区別することです。仮にうれしかった話を何度も繰り返す方がいたとします。その方は感情で話しているのだから、「それ聞いたよ」と言うのでなく「よかったね!」と共感すべきかもしれません。

逆に怒りの感情が湧いた時は「相手が思うように動いてくれないのは、この情報が不足していたのかも」と論理的に考え、論理的に話せばいい。感情と論理を混ぜなければ、コミュニケーションに関するストレスは激減すると思います。

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生物や宇宙について興味があり、普段の行動をそこから考えることがあります。例えば、人間は大脳皮質が発達していて、ほかの動物より過去や未来を捉えやすい。人は思考の上では、過去から未来を見るなど時間軸を自由に設定できるのです。

例えば孫正義さんにプレゼンする時、私は非常に緊張してしまったのですが、「小学生の頃の私から見たら考えられないような場所にいる」「昔もこういうことはあったけど、いまの私から見てもちゃんとできた」と時間の幅を広げて考えると気持ちが整ってきました。

また、気になって仕方ない何かを「長い時間軸で見れば大したことはない」と考えることもできると思います。

 

遺伝子解析は人の健康状態の向上だけでなく、疾患の研究にも役立ちます。将来、ビッグデータができれば「この遺伝子がこの病変の原因だった」と、まだ解明されていない疾患のメカニズムが明らかになるかもしれません。

また、食糧問題、エネルギー問題にもいい影響を及ぼすはずです。穀物がどうすれば育ちやすいのか、どの植物をどう育てれば効率がいいバイオ燃料を創り出せるのか、といったことが解明されるでしょう。

実は私、以前は周囲に「生命の謎をすべて解き明かしたい」と言っていました。でも最近、幸福を結果で定義しないほうがいいと気づいたのです。

仮に「会社を上場させたい」と願う人がいたら、上場させたら終わりです。しかし「会社を持続的に発展させている状態が幸せ」なら、実現の過程にも幸福感が持てるはずです。

だから私は、これからも生命の謎に挑戦し続けます。今後は、自分の体の説明書を読んで病気を未然に防ぐ時代が来ます。ぜひ一度、我々のサービスをご利用ください。

高橋 祥子/「ジーンクエスト」社長
'88年生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科在籍中の'13年にジーンクエストを起業。'18年からバイオベンチャーのユーグレナの執行役員にも就任。経済産業省「第2回日本ベンチャー大賞」経済産業大臣賞(女性起業家賞)など受賞歴多数。著書に『ゲノム解析は「私」の世界をどう変えるのか?

『週刊現代』2019年3月16日号より