1リットル1億円…!「月の水」発掘ビジネスに乗り遅れる日本

民間のムーンミッションが一斉スタート
嶺 竜一 プロフィール

米国はNASAがベンチャーに予算を供給

米国のロケット事業を主導する民間企業は、TESLAの設立者であるイーロン・マスク率いるスペースX(ロケットはファルコン9など)、Amazon.comの設立者であるジェフ・ベゾスが設立したブルー・オジリン(ロケットはニューグレンなど)、

ボーイングとロッキード・マーチンの合弁会社ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ロケットはヴァルカンなど)、ノースロップ・グラマン(ロケットはアンタレスなど)などがある。

NASAはサターンV、アトラスなどのロケットを持つが、自前のロケットはもうほとんど打ち上げていない。

「スペースXやブルーオリジンはNASAから大量に予算を供給されているので、十分なお金がある。そこに金融市場からの資金とテクノロジーが加わるため、日本の宇宙開発に比べて圧倒的な開発力があるのです」(夫馬氏)

そもそもNASAの予算は2兆3000億円(19会計年度)で、JAXAの予算の10倍以上。その巨額の費用を使って民間企業とNASAが一体になって宇宙ビジネスを進めているのである。

また、NASAに続く規模のEUのESA(欧州宇宙機関)も民間との協業を模索している。今、民間企業に最も人気なのは打ち上げ費用の安いインドのロケットだ。JAXAのイプシロンは600kgの打ち上げに55億円かかる(30億円を目指しているが)が、インドのPSLVロケットは1800kgの積載能力で20〜30億円と推定されている。

「ESAはNASAの成功を見て焦りを感じています。ルクセンブルクの国際会議に参加した際に、ESAの事務局長は、『今や政府の宇宙当局は“オールド”な存在で、これからは企業が“ニュー”プレーヤーとなる』と表明。

それを受け、NASA幹部は、『ESAが“オールド”なら、NASAはもはや“古代(Ancient)”』と皮肉を言い合ってましたね」(夫馬氏)

 

300兆円に膨らむ市場を日本は逃す?

一方で、日本の宇宙政策はどうか。

「JAXAは自前主義から方針転換していません。イプシロンは現状、衛星などをお試し特価で載せて飛ばしていますが、正規の価格では高すぎて民間企業は衛星会社も資源開発会社も荷物を載せようとしないはず。

イプシロンの製造にはIHIなどの重工系企業が関わっていますが、開発主体はあくまでもJAXA。この自前主義から早く脱却しないと、日本はますます差を広げられてしまいます」と夫馬氏。

日本にも月面探査ミッションに挑む宇宙開発ベンチャーispace(アイスペース)があり、日本での資金調達にも成功しているが、海外勢と伍するためにNASAからも予算を獲得しているのが現状だ。

ispace社で開発中の月探査ローバー

現在、世界の宇宙ビジネスの市場規模は38兆円。それが20年後には300兆円を超えると言われている。なお、その試算には水などの資源は入っていないというから、300兆円はミニマムの数字だ。中国も、NASAに匹敵するほどの宇宙予算をつけてこの市場を本気で取りに行っていると言われている。

日本企業はこの金脈を、指を咥えて見ているだけでいいのか。