死んだ独身男性のために女性を殺して捧げる…?中国に残るヤバい因習

女性遺体売買まで行わている
北村 豊 プロフィール

因習に縛られる遺族

2018年4月7日にオーストラリア放送協会(ABC)の中国語ウェブサイトに掲載された冥婚に関するニュースは、同協会の中国出身記者が体験した事実を下記のように報じた。

1)(彼の友人である)李朝龍が中国の中原地区(黄河中・下流域)にある某医院でリンパ癌により死亡してから1年後の2009年、李朝龍の母親は遂に死んだ息子のために花嫁を見つけた。それは同じ村の娘で、名前は李秀楹(りしゅうえい)であった。李朝龍の母親は李秀楹の両親との間で、李秀楹の死亡後に彼女の遺体を買い取り、息子の遺体と冥婚させる約束を取り付けた。そして、李秀楹はその数時間後に腎不全で死亡したのだった。
2)李秀楹が死亡した後に、両家は葬儀の中で抱き合って悲しみ、悲痛の中で冥婚を祝った。すなわち、李秀楹が逝去してから2日目に、両家は葬儀と婚礼を同時に行った。そして、共に早世して一面識もなかった新婚伴侶は一緒に李朝龍の家の墓に葬られた。こうして李朝龍は遂に既婚男子となり、李朝龍の家と李秀楹の家は、冥婚を通じて親戚となったのだった。
3)この婚姻は李朝龍の家にとって極めて重要なものであった。李朝龍が死んだ年に、一族の長老は李朝龍の母親に対し、李朝龍を墓に葬ることを禁じたのだった。その理由は、李朝龍が独身のまま死んだからで、未婚の李朝龍を先祖代々の墓に葬れば、当時まだ元気だった李朝龍の祖母に禍が降りかかるというものだった。これは極めて心外な話だが、李朝龍の母親は伝統的な因習には逆らえなかったという。一方、花嫁となった李秀楹の両親から言うと、もしも彼らの娘が今回の冥婚をしなければ、地元の習俗により彼女は永遠にどんな場所にも正式に埋葬することが許されないところだったのである。
4)埋葬用地を節約しようと、中国では1997年に『“殯葬(葬儀・埋葬)”管理条例』の規定が公布されて、人口が稠密で耕地が比較的少なく、交通が便利な地区では火葬が実行されている。しかし、伝統観念の影響下で、多くの人々は依然として死後は土葬されて往生することを渇望している。その一方では、中国共産党は政権を打ち立てた後はずっと無神論を推奨し、封建的な迷信の除去を呼びかけているが、同族支配の家族制度の影響を受けて、冥婚のような伝統風俗は容易には除去できないでいる。

取引の実態

また、2016年5月12日付の週刊誌「中国新聞週刊」は、「中国冥婚調査:15万元(約245万円)以下では骨すらも買えない」と題する記事を掲載した。内容は次の通りだ。

 
1)山西省などの地域では、もし未婚の男子が不幸にも逝去すると、その父母は死んだ息子のために、社会的地位や経済状況が釣り合う未婚女性の遺骸をさがし、2人の遺骸や骨を合葬し、両人をあの世での夫婦とする。そうすることによって、両家の父母は売手と買手の関係から親戚に変わる。若くして死んだ女性の遺体はこの故に一種の「商品」となり、正札価格があるだけでなく、甚だしきは死体泥棒をはびこらせることになる。
2)王勇は山西省臨汾市洪洞県の某医院の職員であるが、彼の眼には女性遺体を火葬するのは最大の浪費に思える。事実上、同医院の霊安室には女性遺体、とりわけ若い女性の遺体は極めて少ない。一度、若い娘が危篤だという噂が流れると、たちまち十数軒の未婚の男子を亡くした家庭が医院に集まり、まだ娘が死んでいない状況下で、彼女の遺体を購入するための激烈な価格競争を展開する。娘の家族が買手の提示した価格に同意すれば、娘が逝去するとすぐにその遺体は買手の家へ運び込まれる。すなわち、娘の家族の同意を取り付けた買手の家族は喜びと安堵をないまぜた心境でひたすら娘が死ぬのを待つのである。
3)女性遺体の価格は、年齢、鮮度、外傷の有無、容貌、家庭事情などを含む様々な要素によって決定されるが、病死の女性遺体は交通事故死の女性遺体よりも価格が高く、死んだばかりの遺体はすでに数年を経過したものよりも価格が高く、新鮮であればあるほど良い。従って、若くて綺麗で、病死したばかりで、家庭条件も良い、高品質の女性遺体は価格が非常に高く、ややもすれば十数万元(約210~250万円)から数十万元(約500~800万円)という高値に達することもある。高品質の女性が病死しそうだという情報は医院の職員から亡くなった息子のために女性遺体を捜し求める家族にもたらされるが、話がまとまれば職員には2000~3000元(約3万3000~4万9000円)の謝礼が支払われるし、話がまとまらなくとも、次回の情報提供を求めて500~1000元(約8000~1万6000円)の謝礼が支払われる。
4)伝統的な習俗によれば、未婚の女性が先祖伝来の墓に入ることは許されない。この掟(おきて)を破れば、祖先の怒りを招くことになるので、未婚女性の遺骸は農地の畦道に埋葬しておき、冥婚が整えば、その遺骸を掘り起こして、冥婚相手の男性側の墓に男性の遺骸と共に葬るのである。30年以上にわたって冥婚の“媒人(仲人)”を生業としてきた人によれば、彼女が小さな頃から冥婚は存在していたが、社会経済の発展に伴い、冥婚市場はますます盛んになったという。前世紀の90年代初頭に1組の冥婚夫婦を成立させるには5000元(約8万円)が必要だったが、それが今世紀初頭には5万元(約80万円)となり、2010年には冥婚を保証するだけで10万元(約160万円)、2016年には15万元(約250万円)では1本の骨すらも買えないほどに価格が高騰したのだという。

こうした背景があるから、文頭に述べた朱連堂は、知的障害で言葉も話せず、歩行困難で自力で身の回りのことができない李春を、35歳もの年齢差があるにもかかわらず、わずか2400元(約4万円)という廉価で嫁に貰ったのだと思われる。

恐らく李春との婚姻は正式な届けを出しておらず、朱連堂は自分が死ぬ前に何らかの方法で李春を殺害して、冥婚の伴侶にする積りだったのだろう。しかし、李春を焼死させた放火がばれて逮捕された今となっては、朱連堂が死後に切望していた李春との冥婚の夢ははかなく消え失せたのだった。