死んだ独身男性のために女性を殺して捧げる…?中国に残るヤバい因習

女性遺体売買まで行わている
北村 豊 プロフィール

動機は冥婚

2月13日付の中国メディアは本件について下記のように報じている。

1)“冥婚”(あるいは“陰婚”)とは死者の為に配偶者を探して結婚させる風習である。2013年11月4日に当時64歳だった朱連堂は35歳年下の李春(当時29歳)を嫁にもらった。朱連堂は李春の家に2400元(約4万円)を挨拶料として支払っただけで、結納金は支払わなかった。当時、柳樹灘村の村民は、「きっと将来冥婚を行うための結婚に違いない」と噂していたという。朱連堂の娘の朱紅雲(仮名)は、父親が死んだ時に父親が1人で葬られるかと思うと心配で、父親が死んだ時の伴侶を捜そうと考えて、35歳も年下の李春との婚姻を推進したと回顧した。一方、朱紅雲はどうして父親の朱連堂が放火までして李春を焼死させたのか理解できないとして、「父親はすでに5年以上にわたって李春の生活全般を世話してきたのに、どうして彼女を慌てて殺さなければならなかったのか。どうして今頃李春を殺害したのか、父親の動機が分からない」と述べた。
2)焼死した李春の兄によれば、李春の実家は朱連堂の家がある柳樹灘村から140km離れた楡林市米脂県楊家溝鎮内の山村にあり、非常に貧しかった。李春は兄弟姉妹4人の末っ子だったが、小児麻痺の後遺症で歩けないだけでなく、高熱が続いたことで知力の低下を招き、知的障害で言葉も話せなければ、自力では身の回りのこともできなかった。彼女は常に頭を床や壁に打ち付ける癖があり、額には繰り返し打ち付けたことで角質化した皮膚がタコになっていた。母親が亡くなった後は、父親が1人で彼女を育て、2人は互いに助け合って生活していたが、父親は自分が死んだら誰が李春の面倒を見るのかと悩んだ末に、李春を年齢差35歳の朱連堂に嫁がせることを決断した。そして、李春が朱連堂に嫁いだ翌年(2014年)に父親はこの世を去ったのだった。
3)朱連堂はどうして放火で李春を焼死させたのか。その理由は不明だが、その目的が李春を先に殺害しておいて、自分が死んだ後に土葬してあった李春の遺骸を自分と同じ墓に埋葬するという“冥婚”であったことは、朱連堂の自供によって明白なものとなっている。

遺体市場の成立

2016年9月にニュースサイト「澎湃新聞」が中国の裁判記録サイトで“陰婚”というキーワードを検索した結果、2009年から2015年までに34件の関連裁判記録、23件の刑事事件、44体の遺体に関する記載を発見したというが、事件の発生地域は陝西省、山西省、山東省、河北省などの8省にまたがっており、遺体の取引価格は3000元(約4万9000円)から数万元(約50万~80万円)まで千差万別であったという。

 

冥婚は中国の殷・商時代(紀元前16~前11世紀)から現在まで数千年にわたって伝えられてきた因習である。

上海大学中国語学部准教授の黄景春によれば、現在も冥婚が盛んに行われている地区は、山西省の臨汾、大同、長治、呂梁などに集中しているばかりか、陝西省の楡林、山東省、浙江省などにもあるが、その数はさほど多くはないという。

端的にいえば、冥婚とは「死者のために死者の配偶者を捜して結婚させること」であり、それによってお墓の中で独り者の寂しい魂がさまようのを防ぐのだという。

上述した黄景春准教授が15年近い調査を経て確認したところでは、冥婚は山東省、山西省、陝西省などの地域で大きな市場を形成しているという。

“供不応求(供給が需要に応じきれない)”という需給バランスが崩れている状況下で、女性死体の価格は急騰し、優良品質の女性死体を嫁としてもらい受けるための“聘礼(結納)”は15万元(約245万円)にまで高騰しているという。

このため、金儲けに敏い人々は冥婚をビジネスチャンスととらえ、不法分子は土葬の墓を暴いて女性死体を盗み出したり、女性を殺害したりして、死体を販売することで暴利を得ているのだという。

さらには、仲介業者となって、常時医院に張り付き、若い女性が病死する情報を得ると、冥婚のために若い女性の死体が必要な人々に紹介して、礼金を稼ぐ者たちもいるという。