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# 携帯料金

菅官房長官が断言した「携帯料金4割値下げ」は本当に実現可能か

総務省が繰り出す「13の施策」

携帯電話料金を4割安くできると断定した昨年8月の菅義偉官房長官の発言を受けた、総務省の値下げ促進策の概要がまとまった。

同省が菅発言を受ける形で設置した「モバイル市場の競争環境に関する研究会」がまとめたもので、電気通信事業法を改正して「携帯電話の端末料金と通信料金のバンドル(一体化)」や「行き過ぎた期間拘束」を禁じ、違反したら業務改善命令を出せるようにするのが最大の特色だ。

そのほかにも、拘束期間中の料金総額の明示を義務付け、携帯電話会社間の料金水準を比較しやすくすること、大手携帯電話会社が格安スマホ会社に通信回線を提供する際の料金算定に新たな方式を導入して格安スマホ会社の料金引き下げを支援することなどを打ち出し、施策数は全部で13に及んでいる。

家計の移動電話通信料が年平均で10万円を突破して、すっかり“ケータイ10万円時代”が定着した感のある状況を、この13の施策が果たして変えられるのか。その実力を含めて、最新情勢をリポートしてみたい。

 

携帯電話料金の変遷

まず、携帯電話料金の最新状況を見ておこう。

総務省の家計調査によると、データ通信を含めた携帯電話やPHSの通信料である「移動電話通信料」は、2011年から7年連続で増加している。その結果、家計が1年間に払う移動電話通話料(平均)は2018年に10万3343円と、2010年の7万9918円から29.3%増えた。

逆に、家計支出全体は2018年に292万1476万円と、2010年の302万7938円より3.5%減少した。この結果、2018年の家計に占める移動通信電話通話料のシェアは2010年(2.6%)より0.9ポイント高い3.5%に上昇。移動通信電話通話料は家計を圧迫する象徴となっている。

振り返れば、政府・総務省はこれまで何度も携帯電話の通信料金の値下げに挑戦したものの、効果はあっても一時的で小さなものに過ぎなかった。

典型的なのは、2007年1月発足の「モバイルビジネス研究会」だろう。

この研究会は同年10月にかけて10回の検討会合を開き、通信料金と端末価格の分離、販売奨励金の会計整理の明確化、SIMロック解除、端末のプラットフォームの共通化、格安スマホ会社(MVNO)の新規参入促進などを打ち出した。政策的にはよく考えられたもので、今回の「モバイル市場の競争環境に関する研究会」がまとめた施策に相通じるものも少なくない。

しかし、イノベーションや新規参入といった競争環境を左右する変化に恵まれなかったうえ、総務大臣の行政指導という強制力の弱い施策にとどまったため、効果は大きくなかった。

各社が翌2008年4月から「横並び」で端末の定価販売と割賦販売を始めたが、皮肉なことに端末価格は上がり、通信料金体系は一段と複雑になった。しかも同年夏には、ソフトバンクが日本国内の販売でアップルと独占契約を結び、iPhone3Gを3万円前後で発売した。

当時は、ガラケーが5万円近かったが、総務省が予期せぬスマホの安売りに手をこまねき、他社はiPhone人気に抗えず追随した。通信料金と端末料金は再び一体化して「元の木阿弥」となり、じりじりと上昇を続けることになったのだ。

最近では、2015年9月11日の経済財政諮問会議で飛び出した安倍晋三首相の携帯電話料金の引き下げ指示が、ほぼ不発に終わったことも記憶に新しい。

結局、政府・総務省は携帯電話料金の長期上昇傾向に歯止めをかけることに繰り返して失敗し、今日の“ケータイ支出10万円時代”を定着させてしまった。

もちろん、この失敗には、総務省が繰り返し、爆発的な料金競争のきっかけになるはずの携帯電話事業への新規参入促進に失敗してきたことも含まれる。

詳しい経緯に興味のある読者は、過去の本コラム(2012年10月2日付「電波オークションより一桁安い金額でプラチナバンドを手に!ソフトバンク孫社長の勝算」、2012年10月9日付「電波行政の秩序破りに苛立つ総務省」、2015年9月22日付「どんどん家計を圧迫! なぜケータイ料金は安くならないのか?」)などで確認してほしい。

果たして、今回、新規参入という切り札を抜きにして、料金引き下げは実現するのだろうか。

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