投資の神様・バフェットはなぜ「株価の下落」を喜ぶのか

「みんなが売りたいときに買え」
大原 浩 プロフィール

ミスター・マーケットに振り回されるな

ビートたけしが若いころ(ツービート時代)「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という言葉を流行らせたことがある。確かに1面の真理をついているし、世の中多数派が有利な局面というのはよくある。

しかし、投資の世界では全く逆で「赤信号、みんなで渡れば死を招く」なのである。日本で最も有名な相場格言だと思われる「人の行く 裏に道あり 花の山」も同じことを意味する。

なぜそうなるのかは、拙著『勝ち組投資家は5年単位でマネーを動かす』(PHP研究所)の第1章「混迷の時代になぜ『5年投資なのか』」の<「100人の村」と市場サイクル>の図(15ページ、図表1)をご覧いただくとよくわかるはずだ。

要するに100人しかいない市場ですでに「買った」人が90人に達すれば今後新たに買う人は残りの10人しかいなく、将来的に売りたい人が90人もいるのだから間もなく暴落するのは明らかである。しかも、この90人の多数派の人々は、「株はまだまだ上がるから、株を買わないやつは馬鹿だ」と叫んでいるのである。

 

逆に、リーマン・ショックのような暴落に慌てふためいて、すでに売ってしまった90人が支配的になっている市場では「株なんか危ないから絶対買うな!」という叫び声があちこちで聞こえているが、さらに売るのは10人ほどだし、彼らは長期投資家でまったく売る気が無いかもしれないから、相場急騰が目の前に来ている。

たぶん、多くの投資家は、頭ではこの原理が分かっているはずだ。しかし、暴落が来るたびにパニックになって投げ売りしてしまうのは、投資を始めたときの自分自身の判断に自信がないからである。

そのような投資家たち(市場)を「ミスター・マーケット」という躁鬱質の人物に例えて説明したのがベンジャミン・グレアムであり、バフェットもこの言葉を好んで使う。

バフェットは、投資を始める前に徹底的に企業の「本質的価値」を研究して絶対の自信を持っているから(ときどき「弘法も筆の誤り」ならぬ「バフェットも投資の誤り」があるが……)どのような大暴落でも、あるいはバブルでも平常心を失わずに冷静な投資を行い多額の利益を稼ぐのだ。