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パナソニック社長の「今のままでは10年も持たない」発言、その真意

27万社員に大激震が走った
週刊現代 プロフィール

モノ作らぬメーカーとは?

当の津賀氏はテスラ社の騒動の顚末についても、包み隠さず答えている。

〈(テスラの問題が落ち着いたのか)知りません。テスラのお守りしてるわけではないですから。大変な一年だった。

(中略)イーロンから『もうかってない』とメールが来る。私は『本当は隠してるのとちゃう』『ロス多いからやろ』と返す。せめぎ合いですよ。はっきり言ってうちはもうかってない。こんなはずではない〉

テスラへの出資が思うように行かず、どうしても次なる海外投資に二の足を踏んでしまう。今年1月、トヨタと共同でEVバッテリー会社を設立することが発表されたが、これはトヨタが慌てて「助け舟」を出したと見ることもできる。

 

前出のパナソニック幹部はこう語る。

「津賀さんは中国の市場でも戦いたいと考えています。中国経済に対する懸念はありますが、『いま中国に投資するリスクと、チャンスを見過ごすリスクのどちらが高いのか』と経営陣は考えているようです。

狙いは家庭向けの家電を包括的に販売すること。次々と建つ新興住宅に、電球から冷蔵庫、ソーラーパネルに至るまでオールインワンで売ることも思索している。ただ、強い地元メーカーも多い中国の市場でそれができるのか、不安もあります」

津賀氏がもうひとつの軸として掲げるのは、「モノ作らぬメーカー」へと会社を作り変えることだ。

「これまではハード面の研究開発がメインでしたが、ソフトにも注力していくと宣言しています。

ドライヤーでも冷蔵庫でも、インターネットに接続できるような製品を開発し、内蔵されたプログラムを更新することで性能を上げる。アマゾンやアップルが先陣を切ったIoT市場に挑もうとしているわけです」(前出・全国紙経済部デスク)

アマゾンは人工知能「アレクサ」に対応する電子レンジを発売した。これに対し、津賀氏は〈アマゾンに電子レンジの何が分かるのか〉と言い切る。

彼が見据えるライバルは、もはやソニーや東芝といった日本のメーカーではない。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のようなIT巨星たちなのだ。

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「モノ作りは他社に委託し、企画・開発・販売に集中していく『ファブレス』化をパナソニックは進めることになります。日本でこれに成功しているのが総合機器メーカーのキーエンスで、自社工場を持たずに高利益を達成しています。

人がコツコツと指先で作るより、AIと3Dプリンターを組み合わせたほうが安くていいものができる。そんな時代にわざわざ人や工場を投入する必要はないと考えるのは自然なことです」(岡山商科大学教授の長田貴仁氏)

このまま単なるモノ作りを続けていても、消費者に飽きられて市場ごと共倒れしてしまう。6年以上社長のイスに座ってきた津賀氏にも、強い危機感があるのだろう。

だが、そのハードルは高い。従業員27万人を抱える巨艦で、社員も納得いくようなシフトチェンジはできるのだろうか。

元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏は、このように指摘する。

「家電の概念を変えるアイデアがあっても、組織の壁はすぐに取り払えません。たとえば冷蔵庫には排熱装置がありますが、これに技術革新が起きて室内ヒーターに転用できるようになったとします。もしそうなればエアコンと冷蔵庫の事業部間で衝突が起こる可能性があります。

直近のパナソニックにはヒット商品がありません。直近の成功体験があることは大切で、なにが当たるかわからない分野にもチャレンジできる突破口になるからです。

テスラへの投資など試行錯誤している段階ですが、EVはすでに投資が過熱しきった分野といえるので、社運を賭けるほどの意味があるかは疑問です」