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がん遺伝子検査をする前に…遺伝カウンセリング、受けますか?

やるべきことを知るためにも

がんは「遺伝子」によって薬を選択する時代に

今年から、がんの保険診療で「がんゲノム(遺伝子)医療」という最新治療の本格運用が始まることを、ご存知だろうか。

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昨年12月、がんゲノム医療に使われる画期的な検査方法である「網羅的がん遺伝子検査(がん遺伝子パネル検査)」が日本で初めて薬事承認を取得し、まもなく保険適用される見込みなのだ。

承認されたのは、国立がん研究センターとシスメックス株式会社が共同開発を行った「オンコガイド(正式名OncoGuide™ NCCオンコパネルシステム)」と、米国のファウンデーション・メディシン社の製品で中外製薬が日本での導入を行った「ファウンデーションワン(正式名FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル)」である。

これまで先進医療(保険適用の対象にするかどうかの判断を下すための試験的な施術として例外的に混合診療が認められる)の対象者のみが受けられ、病院側の研究費の補填分を差し引いても40万円以上かかった検査が、保険適応の安い金額で受けられるようになる。

一般的にがんで行われる「標準治療」では、外科治療(手術)、放射線治療、抗がん剤治療の3つの治療方法のうちのどれか、または複数の治療法を組み合わせて治療する。このうちの抗がん剤治療の一つとして、遺伝子の変異を特定した上で、より個々の患者に適した薬を選択するのが「がんゲノム医療」だ。

 

従来のがん治療では、血液検査、X線検査、内視鏡検査、細胞診検査などから、がんの部位、大きさ、進行度、種類などを推定または特定し、治療の選択に移る。

がんは長年の遺伝子への傷などにより、遺伝子に変異が起こって、発生することは以前から知られており、がんにつながる特定の遺伝子変異はこれまでの研究から数多く発見されている。そのため、これまでの標準治療で使用されている抗がん剤の一部では、こうした遺伝子変異を標的にした薬もあった。

代表例は肺がん、大腸がん、乳がんで、生検や手術などで採取されたがんの組織を用いて、1つまたは幾つかの遺伝子の変異があるかないかを調べ、その結果をもとに患者に最も適切な薬を選んで治療したりする。

例えば肺がんの場合は、がん細胞の増殖にかかわる遺伝子変異のうち3種類については、それぞれに合った薬がある。そのため肺がんとわかると、この3種類の遺伝子変異検査を別々に行わねばならなかった。時には採取したがん細胞が3つの検査を行うには足りず、再度患者に採取に応じてもらわねばならないということもあった。

これに対し、「網羅的がん遺伝子検査」では、患者から採取したがん細胞の数百もの遺伝子情報を高速で読み取る「次世代シークエンサー」という解析装置を使うことで、1回の検査でがんにかかわる複数の遺伝子変異の有無を網羅的に調べることができる。

オンコガイドは114、ファウンデーションワンは324の遺伝子変異の検査が可能だ。その遺伝子情報を基にして、その人の体質や病状に適した医療を行うのが、「がんゲノム医療」である。

この検査結果をみれば、患者ごとのがんの特性がわかるだけでなく、他の臓器への転移や再発の推測にも役立てられ、より先進的で適切な治療を受けられる可能性が高まる。

検査で見つかった遺伝子変異に対して効果が期待出来る抗がん剤がすでにある場合はその抗がん剤を使用できるし、該当する遺伝子変異に対応する臨床試験中の新薬候補がある場合は、臨床試験への参加も検討できる。

夢のような医療の進歩に聞こえるが、現状では、「網羅的がん遺伝子検査」はまだ研究・評価中の検査であり、がんゲノム医療は発展途上段階だ。

今のところ、網羅的がん遺伝子検査によって治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異が見つかるのは全体の約半数の患者にとどまる。さらに、自分のがんに合う薬の使用(臨床試験を含む)に結びつく人は全体の10%程度と言われている。

「ゲノム医療」を受診できる人は誰?

また、誰もが保険適用で「網羅的がん遺伝子検査」および「ゲノム医療」を受けられるのではない。

現状では、①標準治療がないなどのまれながん(希少がん)、②原発不明(どこの臓器から始まったかがわからない)がん、③標準治療終了後あるいは終了が見込まれ、体力も残っていて次の新たな薬物療法を希望する場合に検討することができる。

つまり、標準治療がまず優先され、標準治療で治療が見込めない人に限って選択できる医療である。

しかもこの検査が実施できるのはがんゲノム医療中核拠点病院(11施設)とがんゲノム医療連携病院(135施設)のみである。