「血液のがん」白血病について、あなたはどこまで知っていますか?

〜ドナーになれる条件と、支援方法
村上 和巳 プロフィール

究極かつ強力な骨髄移植という治療

これらの治療で効果不十分だった場合や、一時的に有効だったが後々再発してしまった場合に行われる治療の一つが造血幹細胞移植だ。「骨髄移植」と「末梢血幹細胞移植」、「さい帯血移植」がある。

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「骨髄移植」は正常な造血幹細胞が多く含まれる骨の中の骨髄液を、「末梢血幹細胞移植」では造血因子を投与したドナーの末梢血(いわば通常の血液)を、「さい帯血移植」では出産時のへその緒や胎盤に含まれる血液を、移植して正常な血液を作る機能を取り戻すという白血病治療の最終手段である。

ただ、ヒトには体内に侵入した異物を排除する免疫機構があるため、単純に移植はできず、移植前に大量の抗がん剤投与と全身への放射線照射で、患者の骨髄での血液を作る機能を大幅に破壊しておく。こうすることで移植した造血幹細胞が患者の体内で定着しやすくなるとともに、免疫による排除を防ぐという仕組みである。

また、造血幹細胞移植では提供者と患者の間で白血球の血液型と呼ばれるヒト白血球型抗原(HLA)の型がなるべく一致していることが必要になる。

HLAの一致度が低いまま移植をすると、移植された造血幹細胞液中に含まれるリンパ球が患者の体を異物とみなして攻撃する移植片対宿主病(GVHD)という合併症が発生し、それが原因で患者が死に至ってしまう場合もあるからだ。

実際、造血幹細胞移植では移植後のGVHDや感染症といった合併症で2割程度が命を落としてしまうという厳しい現実がある。

 

白血病はどの程度治るのか

ではこうした治療で白血病はどの程度治るのか。がんではおおむね診断から5年後に生存している場合は、がんが治ったとみなすため、診断から5年後の5年生存率が治ったかどうかの目安になる。

この5年生存率は急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病では全年齢を合わせるとおおよそ30~40%である。ただ、この数値は年齢やがん細胞の質の悪さなどでも変わってくる。例えば、急性リンパ性白血病の5年生存率を年齢別で見ると、15歳未満の小児では70~80%、15~60歳で30~40%、60歳以上で10%と、若いほど治りやすい。

慢性骨髄性白血病は2001年以前の5年生存率は60%程度。もっとも診断から5~6年で急速な進行が始まるため、診断から10年も経つと生存率は25%程度まで低下した。ところが2001年に分子標的治療薬が登場したことで5年生存率は約90%まで上昇するほど劇的に改善している。

これらの数字は人によって受け止め方が異なるかもしれない。ただ、世の中で「がん」と呼ばれる病気の中で、白血病はある程度進行しても治療で治ったと言える状況になる確率はこれでも高い方に入る。

しかし治るまでの道のりは平坦ではない。まず、急性白血病での大量化学療法、造血幹細胞移植の前の大量化学療法と全身放射照射は非常に苦痛を伴う。大量化学療法で使用される抗がん剤は「毒(抗がん剤)を持って毒(がん細胞)を制す」細胞毒であり、正常な細胞にも作用して起こる副作用はほぼ避けられない。

代表的な副作用は、強い吐き気。現在は制吐薬があるため、以前ほど患者は苦しまなくなったが、中には制吐薬が効かない人もいる。また抗がん剤は口の中の粘膜や毛根と言った細胞の分裂が盛んな部分に作用しやすく、脱毛や口内炎も起こりやすい。

急性リンパ性白血病での化学療法経験がある女性は「治療中は起床時に抜け落ちた髪の束が枕に張り付いていて非常に落ちこんだ」とその経験を振り返る。

口内炎は抗がん剤が口の中の粘膜を傷つけることに加え、細菌感染でさらに悪化することも少なくない。大量化学療法で骨髄中のがん細胞を死滅させると、残っている正常な白血球も死滅して細菌やウイルスへの対抗手段が失われることで、感染症にかかりやすくなるからだ。

この口内炎と抗がん剤による食欲不振などの副作用も重なり、治療中に何も食べられなくなることすらある。口内炎については口腔ケアである程度症状を軽くすることも可能だが、完全に回避するのは今でも難しい。また感染症のリスクは治療終了後も一定期間は注意を払わねばならない。

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