あの有名企業に勤めながら副業している人たちに話を聞いてみた

実際、そんな時間はあるんですか…?
島影 真奈美 プロフィール

毛糸輸入ビジネスを始めた銀行マンの話

こうしたルールのもとで、実際に副業を始めた人がいる。

新生銀行で、再生可能エネルギープロジェクト向けの融資業務に従事する田澤正宏さん(32歳)は、昨年1月の副業解禁のリリースを受けて、副業の検討を開始。カシミヤ100%毛糸の輸入ビジネスを立ち上げるべく、準備中だ。

毛糸玉(大)が商材の「カシミヤ100%のオーガニック(未染色)毛糸」。手前にある毛糸玉(小)は染色作家さんが藍、玉ねぎ、アボカドなどで染めたもの。

「以前から、事業を興すことに憧れのような気持ちは抱いていました。高校生の頃、ソフトバンクの孫さんやライブドアの堀江さんが連日メディアをにぎわせていたのを見ていたせいかもしれません。

ただ、就職して働きはじめると、今のキャリアをすべて捨ててチャレンジするのは、あまりにハードルが高かった。そんな折り、副業が解禁されると聞いて、『あ、来たぞ』と思い、すぐに“副業の材料”を探し始めました」

最初に考えていたのは海外向けの買い物代行サービス。妻が、モンゴル在住の友人に、日本製の化粧品やベビー用品の購入をよく頼まれていたのがヒントになった。

ところが、送料や送付方法、商品選定などのリサーチを重ね、いざモンゴルに現地調査に赴いたところ、「他にもたくさん似たようなことをしている人がいるからやめたほうがいい」と現地の人々に諭される。ガックリ来たところに紹介されたのが、カシミヤ毛糸を紡ぐところからニット製品にするまでを一貫して手がける工場だった。

といっても、田澤さんは、アパレル業界もニット制作もまったくの門外漢。「せっかく紹介してもらったけれど、僕には手に余ると思っていました」と笑う。当初は付加価値をつけるためにフルオーダーでのニット製品の取り扱いも検討したが、ニーズが乏しく断念。

カシミヤニットの専門店やニット作家のワークショップなどに足を運ぶなかで、ニット製品ではなく、カシミヤの最高級毛糸を扱うというスタイルに転じた。毛糸が上質であることはもちろん、毛糸を紡ぐ“作り手”の顔が見えることも訴求点になると、ニット作家の方々から助言があったという。

 

未染色のカシミア毛糸を現地から仕入れて販売

「ニットのデザイン、ワークショップの開催等を行うニット作家、草木染めの糸を国内外向けに取り扱う作家の方向けに、カシミヤ100%のオーガニック(未染色)毛糸を提供する予定です。

まずはプロの方々に未染色の毛糸を提供し、未染色の風合いをそのまま活かしていただくか、各自染めていただくスタイルを想定しています。ゆくゆくは作家さん同士のコラボを通じて編み物キットなどを扱うことも視野に入れています」

初年度の売上目標は、おおよそ100万円。ただし、「それぐらいあれば、自分でも副業として納得ができる水準かなというぐらいで、こだわりはない」そうだ。また、副業にあてる時間は、休日に限定する。そもそも「本業に支障をきたさず、無理なく続けること」を大前提に、副業の内容を検討してきたという。

副業の検討のプロセスがプラスになった

「副業の事業プラン構築にあたって、いろいろな人に会い、話を聞く中で、これまでにはなかった人脈が広がっています。社外はもちろん、社内での横の広がりも生まれつつあります。

また、本業である融資業務でも、自分がいざ事業を立ち上げてみての難しさや大変さを実感することで、融資先への理解を深まり、より望ましい接し方が身につくのではないかと考えています」と田澤さんはいう。

ほぼベンチャービジネスの起業のような副業だが、新生銀行のグループ人事部は、

「従業員は会社の求めるパフォーマンスを上げ、会社はそれに対して対価を支払うというのが基本的な会社と従業員との関係であると考えています。その意味では会社のパフォーマンスと無関係である従業員の社外活動を会社が制限すべきではなく、社員が自由な志に基づいて自己責任で行うべき、というのが基本的な発想です」と説明する。

DeNAでは200件の副業を承認

社員の自己実現機会のひとつとして副業制度を導入したディー・エヌエー(DeNA)では「『本業に支障を出さない』『会社に迷惑をかけない』「健康管理時間を遵守する」を副業の3原則として定めている。

「細かい確認事項はいくつかありますが、主に『副業先及び当該企業との関係性』(競合・利益相反等の観点)、『副業の内容』(情報漏洩リスクの観点)、『副業従事時間』(本業への支障・健康管理の観点)、期間について所属部門の上長及び運営事務局に申請し、承認を得る必要があります」(DeNA広報)

これらのチェック項目をクリアし、承認された副業は約200件(2019年1月末時点)。その内容は「ウェブサービスやアプリ開発などDeNAの業務内容に近いものもあれば、DeNAでは事業化していない分野に携わる社員もいる」(DeNA広報)という。