金正恩はどこで間違えたか...米朝会談歴史的失敗の「3つの理由」

そして気になる、こんな「予告」

人類にとって大きな後退

1969年に初めて月面着陸を果たしたアポロ11号のニール・アームストロング船長は、こんな名言を吐いた。

「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ」

私は今回の「ハノイの決裂」の第一報を聞いて、皮肉にも半世紀前のこのセリフを思い出した。今回の米朝首脳会談を評して言えば、こういうことだ。

「一人の人間にとっては小さな退歩だが、人類にとっては大きな後退だ」

 

トランプ大統領と金正恩委員長は、あえて「決裂」という道を選んだ。予定していた和やかなランチも共同声明の署名式も中止となり、トランプ大統領は記者会見を予定より2時間早めて行うと、そそくさとエアフォースワンに乗り込んで帰国した。

両首脳とも、それぞれ「傷を負って」の帰国となった。特に、トランプ大統領の方は深刻だ。後述する「ロシア疑惑」とダブルパンチで、2月28日は「トランプがレームダック(死に体)化した日」として、記憶されるのではないか。ベトナム戦争の「サイゴン陥落」から44年を経て、アメリカは再び「ベトナムでの敗北」である。

そもそも、トランプ政治は根本から誤りがある。それは、自分の会社経営の延長として、国家運営を行っていることによるものだ。何事も正規の手続きを踏まず、前例を無視し、言いたいことはツイッターで叫び、反対者はすぐクビにし、朝令暮改は日常茶飯事。それでもアメリカがガタつかないのは、「150年の栄光の蓄積」があるからに他ならない。

会社経営と国家運営が決定的に異なる点が二つある。一つは、内政面で「トップの人格」が問われること。もう一つは、外交面で防衛が、会社経営に欠如していることである。

内政面から言えば、現在、2016年秋の大統領選挙の際にトランプ陣営がロシアと「共謀」していたという「ロシア疑惑」が、大詰めを迎えている。アメリカ時間の2月27日には、トランプ大統領の顧問弁護士を10年以上も務めていたマイケル・コーエン被告が下院の公聴会に出廷し、7時間あまりも証言を行った。そしてその「衝撃の映像」が、全米に生中継されたのである。

それは、「トランプは人種差別主義者で、詐欺師で、ウソつきだ」という宣誓証言に始まった。続いてコーエン被告は、トランプ陣営が、ウィキリークスにヒラリー・クリントン候補のメール暴露を頼んでいた疑惑について、「トランプ陣営は暴露が出る前に、暴露が出ることを知っていた」と証言したのだ。

これで「ロシア疑惑」は一層深まったことになり、ワシントンでは早くも「大統領弾劾」という言葉が飛び交い始めた。トランプ大統領が「トップの人格」を持ち合わせていない指導者であることが、白日の下に晒されたのだ。

私は「ハノイ会談」の2日間、CNNを長時間見ていたが、ほとんどすべて「コーエン証言」のニュースだった。アメリカでは、トランプ大統領が遠くベトナムへ飛んで、「世紀の会談」に臨んでいることなど、どこかへ吹っ飛んでしまっていた。

【PHOTO】gettyimages

ハノイにおいても、何度もトランプ大統領に「コーエン証言」についての質問が飛んだほどだ。トランプ大統領自身、ホテルのテレビで、「ハノイ会談」そっちのけで公聴会を観ていたという説も出ている。

ともあれトランプ大統領にとっては、内政も外交も、ともに「凶」と出てしまった。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら