いま一度する「米中貿易戦争」の正しい読み方~協議再延期を受けて

任期のあるトランプと任期のない習近平
唐鎌 大輔 プロフィール

米中貿易戦争、実質的な開戦は「2018年7月6日」

トランプ政権における保護主義政策が対中貿易摩擦と同義語のように語られるようになり始めたのは2018年6月以降である。

〔photo〕gettyimages

厳密には6月15日、米通商代表部(USTR)は、通商法301条(以下301条)に基づき、中国の技術移転策に対する制裁措置として追加関税を賦課する対中輸入500億ドル(1102品目)のリストを公表した。このうち340億ドルについて25%の追加関税が実際に賦課されるようになったのが7月6日であった。

就任以来、強い語気で対中強硬策を謳ってきたトランプ大統領だが、攻撃対象を中国に限定した上で実際に追加関税を賦課したのはこれが始めてである。ここから、両国間で追加関税の応酬が始まったことを思えば、米中貿易戦争の実質的な開戦は「2018年7月6日」だったと言えるかもしれない(ちなみに同日、中国は同額・同率の制裁関税を決定している)。

 

この一連の動きがショッキングだったのは、トランプ政権は5月19日に貿易赤字削減に関する中国政府との共同声明を発表し、追加関税の実施を見合わせるとしていた経緯があったことだ。

しかし、この方針は5月29日に突如撤回され、6月15日の追加関税リスト公表、そして7月6日の関税賦課に至った。改めて対中制裁への強い思いを確認する展開であり、ここから「米国vs.中国」という対立構図が市場の一大テーマとなり始めた。

その後、340億ドルの残額160億ドルに対し25%が8月7日に、2000億ドルに対し10%が9月17日に決定され、それぞれ8月23日と9月24日に賦課が始まっている。

今年に入ってから注目されてきた追加関税の引き上げ期限「3月1日」はこの最後の2000億ドルに対する10%を25%にするか否かという話である。本来は2018年12月1日が期限であったが、これが米中首脳会談の結果として今年3月1日に90日間、先送りされていた。

壮大なマッチポンプが続く可能性

昨年12月1日の米中首脳会談後、米国から中国へ90日間の関税引き上げ猶予が与えられた時から、「90日後にまた(協議を延長して猶予を与えると言ったような)同様の展開が起きるのではないか」との思惑はあった。

あれから90日間が経過し、やはりその思惑通りになった。恐らくこうした「自分で火をつけて自分で消火を演出する」という、国際金融市場を巻き来んだ「壮大なマッチポンプ」は再選を賭けた大統領選挙の行われる2020年11月まで続くことだろう。

では、全てはトランプ大統領の交渉戦術通りに進んでいるのだろうか。実はそうでもない。