えっ、なぜ..!?.不動産業者がマンションを〝買わない〟理由

彼らがよく知る「厄介な未来」
榊 淳司 プロフィール

要注意なマンションの特徴

マンションを購入したら、管理組合の〝私物化〟にも警戒する必要がある。なぜなら、マンションというのは小さな自治体みたいなもので、管理組合の業務執行機関である理事会のトップ=理事長はいわば〝村長〟、理事は〝村議〟、一般の区分所有者は〝村民〟にあたるわけだが、区分所有者から徴収した管理費や修繕積立金といった〝税金〟が、けっこうな金額に膨らむからだ。

たとえば、修繕積立金は10年も経てば戸当たり100万円程度は積み上がる。100戸のマンションなら1億円、500戸なら5億円にものぼる。管理組合に集まったこの巨額の〝税金〟をどう使うかは、基本的には理事会で決まる。正確には、理事会でどの業者にいくら払ってどういうことをしてもらうのか、という議案を作って、管理組合の総会に諮る必要がある。

しかし、ほとんどの総会では、理事会が出した議案が否決されることはない。事実上、理事会の決定=管理組合の決定である。つまり、理事会をリードする理事長は、実質的に管理組合の予算をいう巨大な利権を手にしているも同然で、そこに利権があれば、時に腐敗する。過去には、専横を利かせ管理組合を私物化した理事長が、約7億円も横領したという事件も発覚している。

とりわけ注意が必要なのは、旧地権者など同じメンバーが長年にわたって理事会を支配しているマンションだ。管理組合のお金で飲み食いをするなどかわいい方で、理事長が自分の関係する企業や知人の企業に何かの工事や備品を発注して、キックバックを受け取るというケースもある。

理事会の私物化が外部に漏れれば、そのマンションの資産価値の評価が下がるリスクにも直面するだろう。

 

不動産業者だけが知る「厄介な未来」

最近注目を集めた話題に、マンションの「建物としての出口戦略がなさ」がある。

鉄筋コンクリートで建造されているマンションの躯体には、鉄が使われている。鉄は必ず錆びる。だからいつか寿命が来る。その寿命は100年とも200年ともいわれているが、巷には築50年でボロボロになって住めなくなっているマンションもある。

また、適切なメンテナンスを施さなければ、マンションは急速に老朽化して築40年程度でもかなりひどい状態に陥り、建て替えを余儀なくされるケースもある。

先日、滋賀県野洲市で約10年にわたって誰も住まずに放置されていた、3階建てマンション(全9戸)に関する報道があった。アスベストが露出した状態で、周辺住民への健康被害が懸念されているという。

ところが、そう簡単には解決しそうにない。まず、解体には3000万円から4000万円の費用がかかるとされ、いったい誰が出すのか、という問題がある。法的に考えれば、9戸の区分所有者が専有面積割合で負担すべきだろう。

その際、9戸の区分所有者全員の同意が必要となるが、今のところ取り壊しに同意しているのは7戸に留まり、残り2戸の区分所有者には連絡が付かないため、このままではマンションを解体することができない。

こうした場合、野洲市が行政として「特定空家」に指定した上で取り壊すことは可能だ。しかし、その費用は所有者に請求されることになっており、7戸の区分所有者が仮に払ったとして、所在不明の2戸の区分所有者は〝逃げ得〟となってしまうのだろうか。このケースの債権は5年で時効となるはずだ。

野洲市のマンションに限らず、一般的なマンションの解体には1戸当たり300万円程度、タワーマンションの場合は500万円程度かかると言われている。先述の通り、マンションの区分所有者は毎月、修繕積立金を支払っているが、解体費用を積み立てている管理組合があるとは、寡聞にして知らない。

このように、マンションという住まいの形態には様々な問題と、厄介な未来が待っている。そのことについては最近刊行した拙著『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)にも詳しく書いた。日本の分譲マンションというのは、制度疲労を起こしているのが現実だ。

不動産業者は、分譲マンションにおける管理上のそうしたシステムの欠陥や不備をよく知っている。相談を受ける機会が多いからだ。だから、彼らの多くは分譲マンションを一生の住処にはしたがらない。いっとき所有しても、最終的には売却してしまう。つらくて厳しい未来が見えているからだろう。

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