えっ、なぜ..!?.不動産業者がマンションを〝買わない〟理由
彼らがよく知る「厄介な未来」なぜ彼らはマンションを〝避ける〟のか?
一般の方は奇異に感じられるだろうが、不動産取引のプロたちは分譲マンションをあまり〝買わない〟。
これは私のまわりだけの話かと思っていたら、決してそうではないようだ。以前、現代ビジネスで公開された、藻谷浩介氏と野澤千絵氏の対談記事『「空き家大国ニッポン」のゾッとする近未来〜首都圏でさえこの惨状…』にも、以下のようなくだりがある。
野澤 だから、建築や住宅業界の人はほとんど、タワーマンションを買ってないですよね。
藻谷 そう、住宅業界の人は超高層物件を買わない。私も家は買っていない。首都圏の家を買うリスクは大きすぎます。
厳密にいうと、不動産業者がマンションを買わない、ということはない。むしろ、普通の人よりもたくさん買っているかもしれない。しかし、買っても数年以内に売ってしまったり、賃貸に出したりしている。つまり、私たちエンドユーザーのように、「〝終の棲家〟としてマンションを購入し、ローンを払いながら長く住む」ために買う人が少ない、ということになる。
なぜ、不動産業者はマンションを〝避ける〟のか――。
意外と面倒で負担の大きい〝義務〟
みなさんは、マンションを買うこと=資産を保有すること、と考えているかもしれない。確かにそういう面もある。しかし、それはマンションを買うことが意味する「ほんの一面」に過ぎない。実のところ、マンションを購入し長く所有するには、次のような面倒くさい〝義務〟を背負いこむことでもあるからだ。以下、順番に説明しよう。
まず、マンションを購入するとさまざまな保有コストが生じる。たとえば、月々の管理費や修繕積立金といった費用を管理組合に支払わなければならない(そうした費用はタワーマンションのほうが割高になっている)。これは法的にも認められたもので、逃れることはできない。クルマや自転車を保有していれば、駐車場代や駐輪場代も加算される。
その他、マンションによっては町会費やネット接続費を別途徴収しているケースもある。もちろん、それらの費用負担を拒否することはできず、そのマンションを保有している限り、半永久的に払い続けなければならない。
また、地震や洪水などの災害や、経年劣化に伴う老朽化などによって多額の修繕工事が必要となった場合、管理組合にプールされている修繕積立金で賄えないとなったら、巨額の一時金を徴収される可能性もある。
これは管理組合の総会で「一時金徴収」に関する議案が可決されれば、各区分所有者には自動的に支払い義務が発生する。いち区分所有者には、議案への反対票を投じる権利はあるが、可決されてしまえば従わざるをえない。
たしかに、一戸建て住宅を保有していても経過年数によって修繕(外壁や屋根の塗装など)の必要が生じるが、自らの意志によって行えるので、修繕資金の積み立てペースは自由。町内会に入るのか、ネット接続でどこのプロバイダーと契約するかも自由。クルマや自転車を所持していても、敷地内にスペースがあれば、駐車場代や駐輪場代はかからない。