体長18m! 夫婦が14年間守り続けた「インディーズ恐竜」の物語

「龍骨」を求める民との戦いの末に…
安田 峰俊 プロフィール

2005年、劉さんに胃がんが見つかったのだ。

だが、劉さんは入院先でも、妻の呉さんに家に帰って化石を守るように指示し、自分の乏しい蓄えからお金を出してガードマンを雇う。

劉さんはいったん退院した後に日常的な行動すらも不自由になったが、自身の大発見を守ろうとする執念は消えなかった。化石の周囲に鈴を取り付けた釣り糸を張り巡らせ、さらに妻の呉さんのアイディアで化石の前に池を作って水を張って第三者が接近できないようにして、監視を継続したのである。

やがて2011年、ついに第2次発掘が開始。翌2012年には第3次発掘を迎える。

もはや歩行も思い通りにならなくなっていた劉さんは、この発掘の再開を喜び、同年春に咽頭がんで死去した。

劉さんは死を前にしても、こっそり裏山の宝峰龍の骨を削って自分の薬にしたりはしなかったようだ。晩年の彼は病苦のなかでも、恐竜の話を聞くと途端に元気になった。妻への遺言も「恐竜が土から出てきたら、わしの墓前に報告しろ」であったという。

そんな彼の遺志を継ぎ、2012年10月、ついに宝峰龍の全身が裏山から掘り出されたのであった。

宝峰龍宝峰龍の発掘メモ。『永川新聞』より

どんどん見つかる恐竜化石

宝峰龍が見付かった重慶市の一帯は、他にも恐竜発見のエピソードに事欠かない。

たとえば1976年には永川区(現地名、以下同じ)上游ダムの工事現場でヤンチュアノサウルス・シャンヨウエンシス(上游永川龍:Yangchuanosaurus shangyouensis)が発見された。このシャンヨウエンシスはヤンチュアノサウルスの模式種となり、中国恐竜のなかでも有名どころとなっている。

ヤンチュアノサウルス・シャンヨウエンシスヤンチュアノサウルス・シャンヨウエンシス Illustration by Getty Images

同一の地層からは、仲間のヤンチュアノサウルス・マグス(巨型永川龍:Yangchuanosaurus magus)も見つかった。

また、1998年には潼南区梓潼鎮の山中で、マメンチサウルス・ホチュアネンシス(合川馬門溪龍:Mamenchisaurus hochuanensis)とみられる竜脚形類と、推定体長6メートルほどの剣竜の化石が出土している。