竜脚形類に迫るヤンチュアノサウルス Illustration by Getty Images

体長18m! 夫婦が14年間守り続けた「インディーズ恐竜」の物語

「龍骨」を求める民との戦いの末に…
「恐竜大陸をゆく」の今回の舞台は、大手航空会社の便では東京から乗り継ぎで8時間近くかかる中国内陸部の重慶市……から、さらに奥地に入った山間部。著者・安田峰俊さんいわく「ハートウォーミングなストーリー」がどうしてそんな場所で生まれたのでしょう?

その恐竜の学名は「バオフェンゴサウルス」か「バオフェングロング」か、それともマメンチサウルスあたりの仲間なのか? まだ論文が発表されていない現時点ではそれすら定まっておらず、便宜上「宝峰龍(Bǎo fēng lóng)」という中国語名で呼ばれているに過ぎない。

中国国内の媒体によっては「宝峰恐龍(Bǎo fēng kŏng lóng)」と書く例もあるなど、表記すら安定していない謎の化石だ。

だが、過去20年以上にわたって地元を騒がせ、何度もメディアで報道され続けているという、デビュー前から話題の隠れた大物新人でもある。

ヤンチュアノサウルスと同時代の竜脚形類

重慶市永川区宝峰鎮で発見されたこの宝峰龍は竜脚形類に属し、約1億6000万年前のジュラ紀後期に生きていた。頭部以外の全身の80%が発見されるという良好な保存状態の化石で、推定されている全長は18メートル、体高は3メートルである。

宝峰龍と同じく永川区にある上部沙渓廟層からは、アロサウルスに近縁の獣脚類ヤンチュアノサウルス(Yangchuanosaurus:永川龍)も見付かっている。

ヤンチュアノサウルスヤンチュアノサウルスの化石 Photo by Getty Images

この沙渓廟層は四川盆地周辺に広がっており、中国恐竜のなかでは比較的有名なマメンチサウルスやトゥオジャンゴサウルスといった面々も、広い意味ではこの地層から出土している。

2018年10月、永川区では新しく建設された永川博物館が開館した。宝峰龍の復元骨格はこの博物館の目玉として展示されており、中国内陸部の地味な田舎町における数少ない名物としても期待されている。

永川博物館永川博物館(『騰訊網』より)

だが、宝峰龍の発見から発掘、こんにちの展示に至るまでには、なかなか大変な物語があったのだった。

裏山から巨大な骨が!

1998年の春のことである。宝峰鎮楊大口村沈家湾村の村人・劉雲書さん(当時46歳)が家の裏山に排水溝を作るべくツルハシを振るっていたところ、土の中に妙な形状の岩があることにに気づいた。