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東急電鉄が目指す新しいビジネスモデル「私鉄3.0」とは何か

次の100年でこう変わる
東浦 亮典 プロフィール

「私鉄3.0」の時代へ

東急グループの課題を考えてみると、グループ全体がサービス産業中心であるため、労働集約型の企業が多いところです。

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ひとつひとつの仕事を丁寧に各スタッフが提供するサービスレベルは悪くないのですが、これからの労働力不足やお客様の多様なニーズに対応していくためには、もう少しIoTやAI、ロボットなどのテクノロジーも活用して効果的にサービスを提供してくことが求められます。

例えば、東急沿線に住んでもらっているならば、その方の購買履歴や行動パターンを把握することは比較的容易です。もちろん個人情報の管理は必須ですが、お客様にとっても何度も同じ書類を書かされたり、同じことを質問されるというのはあまり快適なことではありません。

痒いところに手が届く、過剰にならない程度にタイムリーに自分のニーズにあったサービスが受けられる、使えば使うほど自分を優遇してくれるというサービスを受けられるのであれば決して悪い気はしないでしょう。

私はこれこそが特定のエリアをテリトリーと認識して沿線経営していく私鉄が次に目指すスタイルではないかと思います。私はこれを「私鉄ビジネスモデル3.0」と呼びたいと思います。

 

「私鉄ビジネスモデル1.0」は、 郊外で宅地販売して、住民に電車通勤してもらい、都心で買い物をしてもらう。かつて小林一三が築いたスタイルです。

「2.0」は、 郊外は再生ステージに入り、中間エリアを中心に職住近接のワーク&ライフスタイルを確立し、鉄道は交流鉄道となる。現在、まさに私たちが取り組んでいるものです。

「3.0」になると、ひとつのICTプラットフォームによって、東急グループの各種サービスが沿線住民・利用者のTPOに合わせてスマートに提供される。

繰り返しになりますが、私鉄各社のサービスは、結局まだ小林一三のモデルから離れられていません。せいぜい進化しても1.2か1.5くらいでしょう。

東急電鉄が2018年に発表した新経営計画では、「2.0に移行する事業体となること」を初めてはっきりと目標に掲げました。現在東急沿線の各所で展開している事業をきちんと遂行していけば、近い将来、ある程度2.0に近い水準には到達できると考えていますが、東急であってもそのモデルはまだ完成していません。

100年やってもまだ先人が描いたモデルから脱却できないというのは悔しいことです。2022年には東急電鉄も公式な100周年を迎えるにあたり、次の100年に向かって少しでも早く3.0に近づけるようにさらに多くの議論と努力を重ねていく必要があります。