村上ファンドも登場した、廣済堂TOBをめぐる騒動の内幕

失敗の条件は整っていた

「葬儀場」をめぐる攻防

京成線お花茶屋駅から徒歩3分に位置する四ツ木斎場(東京都葛飾区)は、2016年末、120億円をかけてリニューアルオープンした。最新鋭火葬炉を12基持ち、年間8000件近くに急増した都内城東地区の葬儀需要に対応している。

この四ツ木を含め、桐ヶ谷、町屋、落合、代々幡、堀ノ内の都内6斎場が、東京博善という株式会社の運営であることを知る人は少ない。全国に約1500カ所ある火葬場の大半は自治体運営。民間企業のものは13カ所に過ぎず、そのうち6カ所が東京博善だ。

この既得権益が、東京博善に着実な利益をもたらす。

「約80億円の売上高の半分が営業利益という高収益体制は、都内23区で約7割の火葬需要に対応してもたらされた。地元住民の理解が不可欠な火葬場の認可が、23区内で新たに下りる可能性は薄い。それが将来に繋がる東京博善の強みです」(葬祭業者)

 

この東京博善の親会社が、東証一部に上場する廣済堂である。現在、同社に対し、米投資ファンドのベインキャピタルが株式公開買い付け(TOB)を実施しているが、TOB価格610円という今の条件では、3月1日の期間内には成立しそうにない。

最大の理由は、傘下企業である東京博善の企業価値を見誤ったこと。そこに村上世彰氏が率いる村上ファンドが目をつけたのはさすがだ。TOB開始を発表した1月17日に410円だった株価は、2営業日で610円に到達。2月5日には700円超えした。

その買い勢力が、村上氏が関係する企業のレノ(東京都渋谷区)であることが、大量保有報告書で明らかとなった。1月22日、市場内で3・42%に相当する85万2600株を購入、以降、買い増しを続けて、2月1日までに238万1000株を持つ9・55%の大株主となった。

村上氏は廣済堂関係者に対し、「(610円というTOB価格は)安過ぎる。ありえない数字だ」と、言い放ったという。

廣済堂は、印刷業と葬祭業が二本柱。18年3月期決算では、印刷を主とする情報セグメントの売上高が約267億円で利益は約3億円。葬祭セグメントの売上高が約82億円で利益が約29億円である。売上高では4分の1に満たない葬祭業が廣済堂の収益源となる構造は、10年以上、続いており、それが廣済堂の価値である。

「コンスタントに営業利益40億円を叩き出しており、この収益力を株価に換算すれば東京博善分だけで1株あたり1200円前後となります。つまりTOB価格の倍。これにTOBでは3割以上のプレミアムをつけるのが常識だから最大で1600円前後となり、610円で応募する人はいません。企業の場合は、株主への説明がつかないことになりますからね」(証券アナリスト)

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