2019.03.17
# 脳卒中

50代が増加中! 脳卒中になったら「救急車」は迷わず呼ぶべきワケ

受診までの「3.5時間」が分かれ目に
黒田 尚子 プロフィール

まさか自分が脳卒中

渡辺さんが受けた診断は「ラクナ梗塞」と言われる脳血管疾患、いわゆる脳卒中の一種だ。

脳卒中には、大別して、血管が詰まるタイプの「脳梗塞」と血管が破れるタイプの「脳内出血」や「クモ膜下出血」の2つがあり、ラクナ梗塞は、前者に分類される。

この病気は、脳の細い動脈が高血圧のために損傷を受け詰まってしまうことで、脳の深い部分に小さな梗塞巣ができる日本人に最も多いタイプ。最近は減少傾向にあるというが、脳梗塞の半数近くを占める。

〔photo〕iStock

脳梗塞を発症した場合、できるだけ早く血管の詰まりを取り除き、血液の流れを正常化させなければならない。

まず病院に搬送されると、すぐにバイタルチェックやCTやMRIなどの検査が行われ、脳卒中のタイプを調べられる。脳梗塞と診断されると、おもに内服や点滴の薬物療法が行われることになるが、発症して4.5時間以内であれば「血栓溶解療養(t-PA療法)」(※1)、8時間以内であれば「血栓回収法(血管内治療)」(※2)を、超急性期の治療として行える可能性がある。

とくに前者は、2005年10月に保険適用が認められた画期的な治療法で、使用することで、後遺症の有無が明らかに変わるという。

 

ただし、t-PAを投与する場合、準備に約1時間かかる。そのため、この治療を受けるには、発症3.5時間以内に病院を受診しなければならない。このほか、さまざまな条件をクリアする必要があり、この治療を受けている患者は5%程度と低い。

※1 血栓溶解療養(t-PA療法)… 血栓を溶かすt-PA(アルテプラーゼ)を点滴静注し、詰まった血管を再開通させる治療法。
※2 血栓回収療養(血管内治療)…カテーテル(細いビニール管)を足の付け根の血管から挿入し、脳血管に進めて、血栓を回収する治療法。

迷わず救急車を呼ぶべき

「とにかく、脳卒中の治療は時間との勝負。異変に気付いたら、躊躇せず救急車を呼ぶことが大切です」と渡辺さんは振り返る。

渡辺さんも感じた片麻痺は、脳卒中の症状として、最も多い運動障害で、これに気づいて病院を受診する人も少なくない。続いて、ろれつが回らない、言葉そのものを失ってしまう、相手の言うことを理解できないなどの言語障害や歩行障害などの症状や、いったん麻痺などの症状が出たが、しばらくして自然に治ったというのなら、TIA(一過性脳虚血発作)の可能性もある。

TIAは、脳梗塞発症の「崖っぷち警報」とも呼ばれ、これが起きると、3ヵ月以内に10~15%(うち半数は48時間以内)に脳梗塞を発症するとも言われている。

渡辺さんは、急性期病院に1ヵ月ほど入院した後、リハビリ専門病院に転院し、約1ヵ月入院。本当のリハビリは、社会や職場に復帰しながら行うことだという主治医の強い勧めもあり、2ヵ月後に職場に復帰できた。渡辺さんは、最初からフルタイムで勤務するつもりだったが、会社からは、しばらく時短勤務にするよう言われたそうだ。

一般的に脳卒中というと、大きな障害が残るイメージが強いが、若年層患者の約7割が、ほぼ介助を必要としない状態まで回復できるという。

とはいえ、生活やカラダが元の通りに戻るわけではない。定期的な通院やリハビリも続いているし、脳梗塞の再発防止のための抗血栓薬を服用しなければならない。これから一生、治療は続くのだ。

渡辺さんは、「まだ2人の子どもの教育費がかかりますし、住宅ローンだって残っています。なんとか職場には戻れてほっとしていますが、障害が残っているため、前と同じように仕事はできません。今から思えば、自分の健康状態を過信していました。『元気』だということと『健康』だということは、まったく違うと思い知らされました」と話す。

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