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「介護保険はいらない」と拒否する85歳ガンコオヤジを説得する方法

介護保険の申請を拒否する親たち

「介護保険の申請」を拒否する親たち

私は90年代から介護の現場を取材し、そのリアルな現実や有益な情報を執筆や講演、NPO活動を通して紹介しています。

親に介護が必要になると、「介護保険を使って乗り切りたい」と、たいていの子は考えます。

介護保険料を納めているのだから「利用する権利がある!」と思うのは至極当然のこと。それに、介護保険料は右肩上がりに高くなっているのだから尚更でしょう。実際、介護保険料の月額平均(2018年度)は、次のように給料や年金から少なくない額を支払っているのが現実です。

◆40~64歳の会社員や公務員:月5723円(労使折半前)…給料から天引き!
◆65歳以上:月5869円…年金から天引き!

何より、家族だけで介護を行うと負担が大き過ぎることは目に見えています。

ところが、親に「介護保険の申請をしよう」と提案すると、まさかの大抵抗にあうことが少なくありません。

親が一気に不機嫌な顔になり、「介護保険なんて使わない!そんなのいらない」と一蹴するという事態に直面するのです……。

ある日、母親の顔にアザが

都内在住のタダシさん(49歳:仮名)の父親(85歳)も、介護保険の申請を断固拒否した1人です。

 

タダシさんの両親は、埼玉県内の実家で夫婦2人暮らしをしています。昨年、父親はガンの手術をして以来、足腰が弱り、起き上がる際や入浴などに手助けが必要となりました。母親がサポートするのですが、自分より体格の大きい夫の手助けはたやすいことではありません。

そこで、タダシさんは、何度も、父親に介護保険を申請するように言いました。しかし、父親は、その度に「僕は自分でなんでもできる」と、取りつく島もない状態でした。

手をこまねいている内に、父親の腕を支えていた母親がバランスを崩して洗面所で転倒。ある日、タダシさんが実家に行くと、母親の顔に打ち身のアザがあって発覚しました。

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「これ以上、放置はできないと思って一計を講じました」とタダシさん。

父親の通院に同行。診察室に一緒に入り、父親が診察の身支度をしている間に、主治医に「先生から、父親に介護保険の申請をしてサービスを使うように言ってください」と頼んだのです。写真に撮っておいた母親の顔のアザも見せたそうです。

タダシさんの期待通り、医師は父親に介護保険の申請を強く勧めてくれました。「僕の言うことにはまったく耳を貸さない父親が、医師の前では従順で、『そろそろ考えていたんですよ』なんて心にもないことを言っていました」とタダシさんは苦笑します。

父親の気が変わらないうちにと、帰りに地域包括支援センター(自治体の介護の相談窓口)に寄って、申請を済ませたそうです。

これで一見落着と思いきや、じつは次の問題が待ち構えていました。