家をせおって日本各地を歩いた男が問う「生活の大前提」

200回以上職務質問を受けたけれど…
村上 慧 プロフィール

200回以上職務質問を受けた

ところで僕の家に住所はない。

住所がない家を地面に置いたら最初に何が起こるかというと、「警察」と「警備員」と「土地の持ち主」から目をつけられる。

「警察」からは「職務質問」を受ける。「何をやっているんですか?」「これはあなたの荷物ですか?すぐにどかしてください」と言われる。

最初に「職務質問」をされたのは、自分の家を道路上に置いて銭湯に行った時だ(今思うと無茶な行動だった)。

銭湯から帰ってきたら警官5、6人が僕の家を囲んでいて「村上さんですか?通報が3回もありました。『爆弾が入っているかもしれない』とか『火災がおきたらどうするんだ』というような通報が3回もありました。すぐに分解して撤去してください」と言われた。

僕は「近くに友達の家があるので、そこに持っていきます」と言って、難を逃れた。

それから僕は「家を肩から降ろす時、つまり家を地面に接地するときは、土地の持ち主に許可をもらう必要がある」ということを学んだ。

 

ちなみに、これまでに多分200回以上職務質問を受けた結果、警察官も十人十色だということがわかった。

「私も、芸術家とかそういう仕事に就きたかった。こんなふうに人を疑ってばかりじゃなくて(苦笑)」という警察官もいたし「それでトンネルを歩くのは危ないから、反射板をつけなさい」と言って反射板をくれた警察官もいた。反射板は今でも僕の家に貼ってある。

「警備員」というのは、主にスーパーやショッピングセンターの駐輪場にいる警備員のことだ。

スーパーでお昼ご飯を買いたい時などに家を置いて店内に入るわけだけど、家を置く場所がない(当たり前だけど駐輪場と駐車場はあっても駐家場はない)ので仕方なく駐輪場などに家を置いていると「ここにはこのような建設物は置けないことになっていまして……」と言われる。

これは3回ほど言われたことがある。僕は自分の家が「建設物」と認められて嬉しい気もしつつ、そこから家を移動させなくてはいけない。

「土地の持ち主」からは、例えば銭湯の駐車場などにちょっと置いておくだけで「ここは俺の土地だ。許可とって置いているのか?」と言われる。

道路上では警察から注意を受け、店舗では警備員や店員から、道路でも店舗でもない場所ではその土地の持ち主から注意をうける。家に住所がないと、最初にこれが起こる。

これを回避する最も手っ取り早い方法は、「家を地面から離すこと」だ。家を肩に背負っている限りにおいては、道路上でも店舗の駐車場でも注意されることはない。

実に面白い。

家が背負われている間はなんの注意もされないけど、地面においた途端に人々はなぜかそれをとても気にする。これはなぜだろう。

(つづく)