日本の公的年金の財政状況が厳しいことはよく知られており、近い将来、年金が減額されることについて、ある程度は覚悟しているという人も多いだろう。
どの程度、減額されるのかは、今後の経済予測によって変わってくるが、今の状態がそのまま継続した場合、筆者は2割程度の減額は避けられないとみている(より厳しく見る専門家の場合3割以上の減額が必要との見解も出ている)。
だが、事実上の年金減額というのは、すでに始まっている。
多くの人は気付いていないかもしれないが、2019年は実質的な年金減額が確実となった。ここで「2019年は年金が増額されると聞いたけど…」という人はニュースをよく見ている人である。確かに名目上の年金給付額は増える予定だが、ここにはちょっとしたカラクリが存在しているのだ。

物価スライド制という「罠」
年金の給付額は基本的に物価動向に応じて決定される。基準となるのは消費者物価指数と賃金指数で、前年の変動分を考慮し、毎年4月に年金の給付額が改定される仕組みになっている。この仕組みのことを物価スライド制と呼ぶ。
年金生活者にとってインフレは最大の敵である。
年金の給付額が変化しない場合、物価が上昇すると実質的に購入できるモノやサービスの量が減ってしまう。インフレによる年金受給者の生活破綻を防ぐための措置が物価スライド制である。