女性は「子宮の声に耳を傾ける」ことで健康に、そして幸せになれる。そんなメッセージを科学的根拠なしに謳う書籍やイベント、カウンセリングサービスなどが後を絶たない。

メディアに取り上げられ揶揄されながらも、なぜ、「子宮系ビジネス」はなくならないのか。女性を狙う「脅し系産業」を取材し、産婦人科医らの意見をまとめた呪われ女子に、なっていませんか?(KKベストセラーズ)の著者である山田ノジル氏に、その背景について考察してもらった。

「子宮系ビジネス」と「子宮系スピリチュアル」

やや下火にはなってきたものの、ここ7~8年、女性向けの美容健康情報では「子宮」というキーワードがトレンドです。その背景は、少子高齢化問題や不妊治療支援といったトピックスが注目されたことが関係しているでしょう。

妊娠出産といった話題に敏感になっている空気に乗り、産むにしても産まないにしても、女性に大切なのは「子宮を健康の軸として考えることである」と煽ります。そこから特定の商品やサービスへ誘導していくので、ここでは「子宮系ビジネス」と呼ばせていただきましょう。

本来、子宮の役割は胎児を育てることですし、その前段階となる妊娠を望むなら、子宮だけでなく、卵巣や卵管の健康も気を配る必要があるはずです。ところが子宮系ビジネスは話を単純かつ壮大に広げていきます。

例えば、こう。

「不妊の原因は、使い捨てナプキンで子宮を冷やしているから」
「あなたの体調不良は、子宮を大切にしていないことのあらわれ」
「女性的に生きないと、子宮に病気があらわれる」

etc.

〔PHOTO〕iStock

子宮を軸に女性のあり方を語る子宮系ビジネスは、健康問題だけでなく、思想や生き方について触れることも少なくなく、それはもはや健康法というよりも自己啓発に近いノリ。さらには運気など、目にみえない世界のことまで子宮で語る発信者もいますので(例:子宮を幸せにするとお金に愛される、など)、そこまでカッとんでしまっている世界観を持つ発信を、私は「子宮系スピリチュアル」と総称しています。

一般的な健康法との違い

一般的な健康法との見分け方は、次のような感じです。「このツボを押すと、子宮の働きがよくなります」であれば一般的な健康法(エビデンスがあるかどうかはさておき)。「このツボを押すと、子宮が活性化して女性性が開花され、魅力的な愛され女子になる! さらにそのツボ押しメソッドの全貌を知るには……このセミナーへ!」とまで広げると「子宮系ビジネス」と認識していただければと。

ちなみに子宮ありきで語られる子宮系ビジネスに対し、「子宮を摘出した人はどうするんだ」とはやしたてる声も上がりますが、スピリチュアル色の強い発信者は「たとえ子宮がなくても、そこに子宮の偉大なエネルギーが残っているから大丈夫」と説明しています。気や運や因縁といった科学的に証明できない世界観であるスピリチュアルの世界を持ち出すと、設定の自由度が跳ね上がるようです。

「子どもは親を選んで生まれてくる」と主張する「胎内記憶」を広める産婦人科医・池川明医師のスピリチュアル的なアドバイスも、あまりの自由度に絶句させられます。

氏曰く、「子どもが本当にかわいくて『育てたい』という感じではない人は、子どもに選ばれない」「頭では妊娠したいと思っていても、子宮が拒否している場合がある」とのことで、子宮との対話を勧めているのですから(ヒカルランド『セックスレスでもワクワクを求めてどんどん子宮にやってくるふしぎな子どもたち』より)。

さて本題です。こうした科学的根拠の薄い子宮系ビジネスがはびこるのはどうしてでしょうか。