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会社にとって「一番重要な数字」が何か、あなたは知っていますか?

経営に強くなるためのExcel活用術

「会計」には2つの種類がある

経理におけるExcel活用の真の目的の一つは、会計ソフトに蓄積された「制度会計」のデータを「管理会計」のデータに変換することだと言えます。さらには、そこから派生してさらに細分化された様々な経営資料を作成することです。

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「吉田さんに経理部門の仕事を再定義してもらったおかげで、会社が倒産の危機から救われたよ。本当にありがとう」

これは、ある中小企業の社長さんが私に言った言葉です。経営危機に瀕していたこの会社から助言を求められたとき、私が具体的に何をしたか。何も特別なことはしていません。使ったツールはExcelだけです。

私はこの社長と経理担当者に、Excelで「目的別に用意した銀行口座ごとの資金繰り表」を作ってもらいました。向こう1年間の、毎月のお金の出入りと、毎月末時点の銀行口座残高の予定を示したシンプルな一覧表です。

すると毎月の口座残高はどんどん減少を続け、9か月後には銀行口座のお金が底をついてしまうことがわかりました。危機的な状況ではありましたが、「いつお金が無くなるか」を正確に把握し、その時点で手を打つことで、資金ショートを回避し、倒産の危機を免れることができたのです。

 

その会社は当時、売上の拡大を見込んで、広告費を増やし、新しく社員も何人か雇用していました。結果、固定費はどんどん増えていく一方で、売上は思うように伸びず、当然の結果として収支は徐々に悪化していたのです。

売上が伸びないため営業も焦って値引きを頻発するようになり、売上に対して限界利益もどんどん下がっていました。しかし売上や限界利益が下がったからと言って、人件費を簡単に下げられるわけではありませんから、労働分配率の数字はどんどん上がり、人件費が会社の経営を圧迫していました。

その結果、毎月の売上よりも固定費の方が高くなっている事態が明らかになり、当然ながら月を追うごとに会社の銀行口座残高はどんどん減少していくことが明らかになったのです。

そこで急遽社長には、固定費の中で生命保険や重要度の低い外注費など、支払いを停止できるものをリストアップし、すぐにその支払いをストップする手続きを実行してもらいました。

さらには金融機関からの借入や生命保険の解約などで資金手当てを行い、社長の役員報酬を引き下げることで、とにかく会社から毎月出ていくお金の額を最大限減らし、最悪の事態を迎える前に難局を乗りきることができたのです。

他の経営者の方にこの話をすると、

「ただの資金繰り表でしょう?そんなものはどこの会社でも作っている、当たり前の話じゃないか」
「うちの会社は顧問税理士が数字を見てくれているから、その辺は大丈夫だ」

という反応が返ってきます。しかし、資金繰り表があっても、その数字が「実際の現金(キャッシュ)の動きを予測したものか」という点についてきちんと理解できておらず、大いなる勘違いをしている社長が案外多いのが現実です。そして、多くの会社が資金繰りに窮していきます。

なぜ税理士がついていて、資金繰り表も作っているのに、そのような事態に陥ってしまったのでしょうか。

ここで経営者や経理担当者がしっかり認識しておくべきことは、「会計には2つの種類があり、その目的は全く異なる」という会計の基本です。

世の中のほとんどの人がイメージしている会計というのは、「制度会計」です。しかし企業の真の現状把握において重要なのは、「管理会計」です。

ここを理解しておかないと、経営や資金繰りにおいて大いなる勘違いをしてしまうリスクが高まります。そしてその「勘違い」を是正してくのが、経理部門がExcelで行う最も重要な仕事と言えるのです。