どうして築400年も過ぎているのに「城」はこんなにかっこいいのか

城の"人間臭さ"から伝わる生命力
萩原 さちこ プロフィール

天守は日本人の「知・技・美」の結晶だ!

天守には、ありったけの美のエッセンスも投じられる。天守を目の前にして、思わず立ち止まり見入ってしまった経験は、きっと誰にでもあるだろう。天守には、人々を魅了する魔力のような吸引力、日本人の琴線に触れる揺るぎない美があるのだ。

めまぐるしく流行が変化し技術が発展するなかで、数百年前に建てられた天守を、「時代遅れだ」とか「古くてダサい」と感じないのはなぜだろう。

むしろ、先人の知恵と工夫、美的感覚に感嘆し、共感さえしてしまうのはどうしてだろう。

それはおそらく、日本人のなかに脈々と受け継がれてきた不変の美意識が息づいているからだ。城は、私たち日本人が持ち合わせている、知恵と技術と美意識の結晶なのだ。

城の真骨頂は、2つとして同じものがない個性的なものであること。そして、美観と実用を兼ね備え、必ず目的と役割があることだ。天守は城を構成するパーツのひとつに過ぎず、決して天守だけで城は語れない。

しかし、講談社ブルーバックス『城の科学〜個性豊かな天守の「超」技術〜』では、あえて天守だけを取り上げてみた。城の顔であり地域の分身ともいえる天守には、やはり特別な魅力があると感じるからだ。5つの国宝天守(姫路城・松本城・彦根城・犬山城・松江城)を中心に、天守の構造や特徴、工夫に迫った。「知・技・美」という観点からその魅力を徹底的に解き明かした、斬新な1冊である。

【写真】姫路城1
【写真】姫路城2
  姫路城。平成の大修理で塗り直された白い漆喰がまぶしい拡大写真上はこちら下はこちら
【写真】松本城
  松本城。手前が大天守で、奥が小乾天守。戦国時代に築かれた松本城は、漆による漆黒の姿とともに、どこか無骨な雰囲気が漂う。拡大写真はこちら 

天守に象徴される近世城の魅力を伝えたい

城とは奇跡的な存在だと、つくづく思う。日本人であれば、その存在をなんとなくでもイメージできるからだ。そして、過去と切り離されたものではなく、誰にとっても身近な存在だ。

江戸時代以降、城を中心に流通・経済・商業は発展し、現代社会がつくられてきた。発展した都市にたまたま城が残っているのではなく、城があるから都市ができ、私たちは歴史を積み重ねてきたのだ。

「……だから、私たちは天守に魅了されるのか」と、その謎がふんわりと解き明かされればうれしい。天守を見上げる時間が、今より少し尊いものに変わる、そんな1冊になりますように。

【図】現存天守12マップ

城の科学
個性豊かな天守の「超」技術

萩原さちこ

全国各地で訪れる人々を魅了する日本の「城」! そして、圧倒的な存在感をもつ「天守」!! 国宝に指定されている姫路城、松本城、松江城、彦根城、犬山城を中心に、その構造や素材、装飾を解説します。