2019.03.01
# 優生思想 # フェミニズム

フェミニズムと優生思想が接近した「危うい過去」から学べること

未来を見据えたフェミニストになるため
北村 紗衣 プロフィール

そして、登場した時にオシャレだった思想は、けっこう力を失わないことも多い。優生思想やファシズムは廃れたと思っても何度も戻ってきたし、今でも存在し、わかりづらい形で私たちの頭に入ってくる。私たちもショーと同様、息を吸うようにそういうものを取り込んでいる可能性がある。

たとえばフェミニズムにおいて今回紹介したような積極的優生思想があまり流行らなくなった後でも、バース・コントロールの問題においては消極的な優生思想、つまり「「生きるに値しない生命」の絶滅を是認する論理を内面化」(荻野『生殖の政治学』、p. 208)してしまった一派があり、これについてのフェミニズム内部での自己批判や内省が行われるのには相当な時間がかかった(これについては既にたくさん研究があり、参考文献にあげた荻野美穂『生殖の政治学』や、同じ著者が『悪夢の医療史』に寄稿した「日本における優生学、生殖技術とフェミニズムのディレンマ」がとてもよく掘り下げているので、関心がある方はそちらをご覧頂きたい)。

オシャレ思想は一度流行が終息しても死なず、何度でも戻ってくるのだ。

歴史に対して恥じない側に立つ

過去のオシャレ思想には、後で大変問題があるとわかったものもある。今オシャレで知識の広い人が広めている思想でも、それは未来の人たちからバカバカしいと笑われるようなものかもしれない。

そんなことを考えていると誰のことも信じられなくなるし、まかり間違うとあやしいニセ科学とかニセ歴史とかにハマってしまう可能性もある。いったいどうやって考えて、何を信じればいいのだろうか。

そこで私がフェミニストとして、そして研究者としていつも考えているのが、歴史が良いと言ってくれる側はどっちなのか考える、ということだ。今、自分の考えが周りの人にどう評価されるかを考えてはいけない。未来の人が自分をどう思うか考えねばならない。

キング牧師は生前、アメリカの白人たちから全く好かれていなかったし、多くのフェミニストや自由のために活動した人々もそうだった。今嫌われても、歴史が良いと言ってくれることは何かを考えてそれを優先するのが、学問や自由に仕える者の責務だと思う。歴史を学ぶことの醍醐味のひとつは、歴史に対して恥じない道は何かを考えられるということだ。

参考文献
荻野美穂『生殖の政治学――フェミニズムとバース・コントロール』山川出版社、1994。
シャーロット・パーキンス・ギルマン『フェミニジア――女だけのユートピア』三輪妙子訳、現代書館、1984。
ジョージ・バーナード・ショー『バーナード・ショー名作集』鳴海四郎他訳、 白水社、1966。
W・ラフルーア、G・ベーメ、島薗進編『悪夢の医療史――人体実験・軍事技術・先端生命科学』中村圭志、秋山淑子訳、勁草書房、2008。
ミナ・ロイ『モダニストミナ・ロイの月世界案内――詩と芸術』フウの会編訳、水声社、2014。

Elsie Adams, ‘Feminism and Female Stereotypes in Shaw’, The Shaw Review, 17.1 (1974): 17–22.
Charlotte Perkins Gilman, Herland and Related Writings, ed. Beth Sutton-Ramspeck, Broadview Editions, 2012.
Philip Graham, ‘Bernard Shaw’s Neglected Role in English Feminism 1880–1914’, Journal of Gender Studies, 23.2 (2014): 167–183.
George Bernard Shaw, Complete Plays with Prefaces, 6 vols, Dodd, Mead and Company, 1962–1963.
Mina Loy, The Lost Lunar Baedeker: Poems of Mina Loy, ed. Roger L. Conover, Farrar, Straus and Giroux, 2015.
Rodelle Weintraub, ed., Fabian Feminist: Bernard Shaw and Woman, Pennsylvania State University, 1977.

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