米中露で拡大する「軍隊の民営化」その語られざる実態

暴力はやはり拡大し続けるのか
河東 哲夫 プロフィール

中国もまた

中国は敗戦国ではないので、兵力の海外派遣に日本やドイツのような制限がない。それでもこれまでは海外派兵には慎重であったが、中国人が世界中に進出するようになった今、中国の利益、中国人の保護のために軍や警備要員を派遣するようになっている。

最大の例はアフリカのジブチに設けた基地であり、既に800名の要員が働き(近接の米軍基地には4000名以上の要員がいる)、ドックも備えていると報道されている(“Lenta.ru” 2018年1月10日)。

中国軍の海外基地に類するものは、他にタジキスタンに小規模なものが報じられている程度だが、軍隊(軍艦及び軍用機)が短期間派遣されたのは、2011年リビア内戦で3万人以上もの中国人を同国から撤退させた際である(『PHP』No.41、2011年5月6日)。

そこで中国は、軍隊を派遣することの問題性を悟ったか、2016年7月スーダン危機では非武装のDeWe Security社が300名余の中国人を国外退避させている(“Lenta.ru” 2018年1月10日)。

中国の「特殊部隊」が海外での実戦に投入された例は確認されていない。

昨年12月には、シリアでISIS掃討作戦が終了するにつれて、ISISに加わっていたウィグル人青年達(2000~5000名いるものと推定されている)が中国に回帰、テロを行う可能性が出てきたので、シリアに中国の特殊部隊が派遣された、という報道が現れたが( “SVPRESSA” 2018年12月1日、”i24news”https://www.i24news.tv/en/news/international/161888-171204-commando-units-and-rice-the-chinese-are-coming-to-syria)、おそらく連絡要員・情報要員が派遣された程度の話しなのだろう。

上記スーダンの例で触れたが、中国では傭兵一歩手前の警備会社が強化されている。Shandong Huawei Security Groupの場合、2010年以来、海外での仕事のために軍人・警官OBを派遣している。以前は現地人を雇用していたが、言語、メンタリティーの違いから中国人の警備員を送り込んだのである。

ただし中国では刑法で、海外でも武器の携行は許されておらず、違反は7年までの禁固刑の対象となるので、中国の警備会社は海外の中国企業の内部警備だけで、社の外の警備は現地の武装警備等に依存している(“ Lenta.ru” 2018年1月10日)。

なお、中国政府の声がかりか、それとも民間事業としてかは不明だが、2014年9月、香港でChinese Security Industrial Allianceが設立され、本土の警備会社約50社を傘下に置いたとされる。同社には、米国の傭兵会社のBlackwaterをかつて立ち上げたエリック・プリンスが雇われていたことがある(“Lenta.ru” 2018年1月10日)。

彼は、2018年1月にはセイシェルで、ロシアの外貨ファンド責任者と懇談した例も報道されており(“The New Yorker” 2018年7月9日)、中世西欧と同じく、傭兵は特定の国家に忠誠を誓うものではないのだろう。但し矛盾するようだが、以上を総括して言えるのは、軍事力は傭兵も含めて、国民国家のコントロールからはまだ外れていない。軍事力が民営化されて秩序が乱れ、ジャングルの掟が世界を支配するまでにはなっていない、ということである。

 

最後に日本にとっての意味

日本周辺の東アジア地域での紛争の多くは、正規の海軍・空軍の関与、あるいはサイバー戦能力を必要としている。しかし人手不足に悩む日本の自衛隊にとっては、軍の民営化、あるいは海外派兵は別として傭兵の活用は真剣に検討してみる価値がある。

また、少数精鋭、かつ機敏に展開可能な特殊部隊は日本でも必要であり、既に陸上自衛隊では2004年に特殊作戦群が創設されている。警察は特殊急襲部隊、海上保安庁は特殊警備隊を有する。

2015年のいわゆる安保関連法で、海外の邦人救出に自衛隊が出動することも可能となった。海外での有事には、民間航空企業は運航を避けることがあるので、自衛隊の関与が不可欠である。