池江璃花子、堀ちえみ…「がん告白」に医師が思う、患者の心の葛藤

専門医が見た様々な患者の「闘い方」
沢田 浩 プロフィール

一方で、平成29年の全死亡数134万397人のうち、がんで亡くなった人の割合は男性で31.9%(22万398人)、女性では23.5%(15万2936人)である。これらは、厚生労働省の人口動態統計によるものだが、男女平均では、がんでなくなる人の割合は27.9%にすぎない。

同様に我々も含めて誤解していることに、がんの病期がある。堀ちえみさんのケースでは、「ステージ4」という部分の意味合いだ。

 

「転移の程度にもよりますが、“ステージ4=末期がん”ではないのです。ステージ4(Ⅳ期)とは、がんが発生した場所以外の遠く離れた場所へ転移している場合につけられる病期です。ですから、さらに病気が進み積極的な治療ができない状態となる“末期がん”とは違うのです。

もちろん、ステージ4であれば命にかかわります。ただ、がんの種類によって、また同じがんでも、がん組織の悪性度によっては進行や病状が異なります。とてもはやく進むがんもあれば、進行がゆっくりしているものもあります。

私はさまざまながんで“ステージ4”と診断された患者さんを診てきました。たしかに多くの患者さんの最期をみとりましたが、一方で長年生きられた方、治癒された方もたくさん診させていただきました。つまり、ステージ4だからといって諦めるのはまだはやいのです」(佐々木医師)

いかに真実を伝え、いかに支えていくか

かつて、がんという病名を本人に伝えることのない時代もあった。20世紀の大半、1985年頃まではそれが当たり前だった。が、21世紀になると、直接本人に伝えられるようになっていったという。

「病気で苦しむのは患者さん自身であることから、患者さん自身の権利として、医学的処置や治療に先立って、それを承諾し選択するのに必要な情報を医師から受ける権利があるのです。つまり、インフォームドコンセント(医療内容を知る権利)と、真実を知る権利が当然となり、“いかに真実を伝え、患者さんをどう支えていくか”が医療のなかではきわめて大事なことなのです。医師にとって患者さんへの告知は、一つの重要な医療行為なのです」(佐々木先生)

だから現在は、病状は本人にまず話し、たとえ家族であっても、話す時には患者さん本人の了解が必要な時代になっている。

「特別なことがなければ、まず患者さん本人に真実を話す医師がほとんどです。患者さん自身の病気、患者さん自身の人生と考えれば、本人が真実を知らないことはあり得ないという考え方が一般的になってきたのです。

医学は進歩をし、今は真実を告げる時代――確かにそうでしょう。しかし、患者さんの心は、それで本当に大丈夫なのだろうか……と、私はいつも思うのです」

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