池江璃花子、堀ちえみ…「がん告白」に医師が思う、患者の心の葛藤

専門医が見た様々な患者の「闘い方」

気持ちを切り替えて闘うために

競泳女子の池江璃花子さんがツイッターで白血病を告白し、タレントの堀ちえみさんは、舌がんであることをブログで公表した。しかも、堀さんは、左首のリンパにも転移していて、その病期は「ステージ4」。本人も「かなり厳しい状況です」とまで綴っていた(その後、11時間に及ぶ手術を受けた、と堀さんのご主人が発表した)。

すごい時代になったと僕は思う。

がんであることを本人に伝えることは、もはや当たり前の時代だが、それを冷静に受け止めて、がんと闘うことをSNSで宣言する時代。

それが「2人に1人ががんになる時代」の現実なのだろう。

 

1月21日に主治医から、「口腔がんの疑いがきわめて高い」と告げられた堀さんは、その後の検査入院を経て、2月6日に口腔がんと確定診断され、告知を受けた。堀さんは、がんであることを公表すべきか迷ったという。いや、その過程では治療をすることさえ迷ったという。

そこからの決断には胸が詰まった。感動もした。堀さんのブログから一部を引用させていただく。

《私が「生きる」為に、頑張らなければと決心したのは、末娘の涙と言葉でした。今思い出しても胸が張り裂けそうです。
「お母さんは病気ばかりで可哀想な人生だった」と…そういう思いを、子供たちの心に残したままで、闘いもせずに諦めて良いのだろうか…
主人と子供たち、家族の為に、私はまだ生きなければならない。そう気持ちを切り替えて、長く辛い闘病に、チャレンジする事を決意致しました。》

ここに時代のキーワードがあると僕は思う。がんを告知されるのが当たり前の時代なら、次は「がんとどう向き合うか」だ。

書籍編集者である僕は、医療をテーマにした書籍に多く携わってきた。この2月22日に送り出した本もテーマは、がん。治療のことよりも、がんを告知されてからの患者さんの心にスポットを当てた本だ。タイトルは、『がんと向き合い生きていく』というものだ。

著者は医師の佐々木常雄さん(都立駒込病院名誉院長)。専門はがん化学療法、腫瘍内科学。青森県立中央病院から、国立がんセンター(当時)とキャリアを重ね、1975年からは東京都立駒込病院の化学療法科(現・腫瘍内科)に勤務。2008年から2012年までは同病院の院長も務めたがんの専門医だ。
東京都立駒込病院名誉医院長の佐々木常雄医師

医師になって49年、2万人のがん患者に接してきた日本屈指の腫瘍内科医である。そんな佐々木さんに、がんと告知された人々の揺れる心模様をうかがった。

「ステージ4=末期がん」ではない

「患者さんのなかでは、“がん=死”というイメージは根強いように思います。がんと言われると、すぐに死が浮かぶ……でも、実はその根拠はありません。一生のうち二人に一人はがんになる、年間100万人ほどの方ががんの診断を受ける時代です。しかし一方で、たくさんの方ががんを克服し、働き、元気に生活されています。実際、がんで亡くなるのは日本人の死因の30%ほど。“がん=死”ではないのです」(佐々木医師)

数字でその実像を追ってみる。

今年1月17日に厚生労働省から公表された、平成28年に全国で新たにがんと診断された患者さんは99万5132人。これは、全国の医療機関に情報提供を義務付けた「全国がん登録」に基づく全数調査によるものだ。