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ホンダの「英国撤退」決断の裏の本音と苦悩を読み解く

ブレグジットは関係ないというけれど

なぜこの時期に?

ホンダの八郷隆弘社長は2月19日、都内で記者会見し、自動車の世界的な生産体制の見直しの一環として、英国とトルコでの生産を2021年中に終了すると発表した。

この発表に激震が走ったのは、3500人の従業員が働く工場が閉鎖される英国だ。メイ首相は「非常に失望した」と発言、また、来月末に迫るブレグジット(英国のEU離脱)の離脱協定の見直し交渉をまとめられない同政権の無力がホンダ撤退の原因とされることを恐れて、「ブレグジットが原因ではない」と火消しに追われているという。

それにしても、なぜ、ホンダはブレグジットの混乱に拍車をかけたとの反発を呼びかねないこの時期に、あえて英国生産からの撤退を打ち出したのだろうか。今回は、その真相に迫ってみたい。

 

イギリス自動車産業の歴史

まず確認しておきたいのは、英国の自動車産業の現状だ。産業革命の発祥の地であるこの国で、自動車生産がピークに達したのは1972年のことだ。あと少しで年間生産台数200万台という水準に膨らんだが、その後、折からの英国病の蔓延もあり、生産活動は停滞した。

1980年代に入ると、「鉄の女」の異名をとったサッチャー首相が「イギリスをヨーロッパの入り口にする」と積極的に外国企業を誘致したことに呼応、日本の自動車メーカーは競うようにイギリスでの生産を開始した。

JETRO(日本貿易振興機構)が2018年3月に公表したレポート「英国自動車産業の現状と課題」によると、2017年時点で、英国自動車産業の直接雇用は約17万人、関連産業全体で約80万人と、堂々たる主要産業の一つだ。生産台数は、2016年に、過去最高だった1972年以来の水準を回復。その2016年と比べると、2017年は3.7%の減少だが、それでも175万台弱と世界第13位、EU域内に限るとドイツ、スペイン、フランスに次ぐ第4位に位置に着けた。

SMMT(イギリス自動車製造販売者協会)は2017年版の「英国自動車産業持続可能性報告書」で、英国の自動車生産が「2020年までに過去最高に肩を並べる」と強気の見方を示していたが、ブレグジット決定が響き、事態は暗転した。2018年の自動車生産台数は152万台弱と2年連続の減少で、一気に5年ぶりの低水準に落ち込んでしまった。さらに、今回のホンダの発表を機に、減少傾向が一段と加速するのではないかと懸念されている。

ブレグジットの期限が近付くにつれて、英自動車業界で景気の悪い話が相次いだのは事実だ。すでに日産自動車が2020年前後から生産開始予定の次期主力SUV(多目的スポーツ車)の生産拠点を英国から日本の九州に移管する方針を打ち出しているほか、英ジャガー・ランドローバー社は4500人の雇用の削減方針を発表。独BMW車はブレグジット対応で今年4月いっぱい英国での生産を休止するだけでなく、生産の一部をオランダに移す検討の真っ最中だ。

しかし、各社が相次いで打ち出したのは、生産の一時休止や他の地域への一部移管に過ぎない。これに対して、ホンダが打ち出したのは、生産工場の丸ごと閉鎖とあって、深刻な事態との受け止めが広がった。雇用や部品の調達にも、他社のケース以上の影響があるのではないかと不安視されている。

ちなみに、ホンダは1985年、英国での自動車生産のため、1985年に現地法人「ホンダオブザユー・ケー・マニュファクチュアリング」を設立した。同社の資本金は現在、6.7億ポンドで、出資比率はホンダ本体が13.7%、ホンダの100%子会社のホンダモーターヨーロッパが86.3%となっている。