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ベネズエラを事実上のデフォルトに追い込んだ「ポピュリズム」の恐怖

日本はそこから何を学ぶ?
小出 フィッシャー 美奈 プロフィール

「中南米の優等生」から破綻国への転落

ラテンの国が大好きな筆者は、いつかコナン・ドイルの冒険小説で名高いカナイマ国立公園に行きたいと思っている。地の果てのような断崖絶壁から1キロ近くもの落差で打ちつける滝「エンジェルフォール」を見てみたいのだ。

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しかし、今のベネズエラは殺人発生率世界一だ。暴動に汚職、凶悪犯罪が多発する。個人で気ままに旅行するには危険すぎる国となってしまった。

昨年、マドゥロ大統領が対立候補を排除して強行した選挙で再選されたが、野党が再選挙を要求。グアイド国民議会議長が自ら暫定大統領就任を宣言したことで国際社会の対応が割れ、内戦が起こるのではと懸念されるなど、混沌とした情勢が続いている。

 

ベネズエラは世界一原油リッチな国だ。オリノコ川流域に豊富に存在するタール状の「超重質油」が技術進化で石油資源として利用できるようになり、これがカウントされたことで原油埋蔵量がサウジアラビアを抜いたのだ。

資源大国として潤っていたため都市のインフラも整備され、他の中南米諸国と比べれば政治も安定して中産階級も育っていた。かつては「中南米の優等生」だったのである。

では何故この資源大国で、食料や生活必需品や薬が慢性的に不足して栄養失調や飢餓まで報告される深刻な危機が進行しているのか。

あまり日本では報道されないが、ベネズエラの事例は誤ったポピュリスト政策がいかに一国のシステムを比較的短い間に破綻させ得るか、という教訓に満ちている。ベネズエラの貧困世帯は2013年から2015年までのたった2年間で人口の3割から7割に膨れ上がり、それが今では9割だというカラカスの大学による試算もある。

特に悲劇なのは、社会格差の是正を期待した民衆の大歓声を浴びて迎えられた政権が、極端なナショナリズムや排他主義、短視眼的なバラマキなど問題解決には程遠い政策で、大多数の国民―とりわけ支持基盤の貧困層―をより深い貧困と不幸に突き落としてしまったことだ。