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大河ドラマ『いだてん』に「ハデな主人公」が存在しない深い理由

これは19世紀の小説と同じだ

楽しいパワーに溢れたドラマ

NHK大河ドラマの『いだてん』が楽しい。

おもしろいというよりは、楽しい。

最初のうちは話があっちこっちに行ってしまい、筋を追おうとするとわかりにくい展開だった。登場人物が多く、それも時代を越えて出てきて、それぞれの人生が描かれている。なかなか珍しい導入だった。

19世紀に流行した小説は、ときにこういう構成になっているものがある。トルストイの『戦争と平和』も、いろんな人物が次々と現れ、かなり読み進めないと、中心人物がわからない。どうやらピョートルという人が中心らしい、と気付くのは、だいぶ経ってからである(少なくとも私はそうだった)。群像小説である。読みにくいけれど、パワーがある。

なんかそれを想像してしまった。

ドラマとしては、かなり珍しい。

意欲的なドラマであることはたしかだ。この先、何を見せてくれるのか、どきどきしている。

主人公は二人。

一人は金栗四三(中村勘九郎)。マラソン選手である。

もう一人は田畑政治(阿部サダヲ)。東京にオリムピックを呼んだ男。

いちおうこの二人がメインキャストである。

 

正直に言えば、地味である。

それも、かなり地味だ。

西郷隆盛(2018年大河ドラマ主人公)や明智光秀(同2020年)に比べるとぐんと知名度が落ちる。

だからだとおもうが、金栗と田畑だけではドラマは進まない。

ほかにも中心的な人物がいろいろ出てくる。

まず、落語家の古今亭志ん生(若い時代を森山未来、年取ってからがビートたけし)。

それから柔道家の嘉納治五郎(役所広司)。すでに柔道家ではなく(たぶん)、教育者である。

とりあえずはこの四人がとっかえひっかえ、ドラマの真ん中に出てきて、お話を進めている。

落ち着きはない。

第一話の冒頭は、昭和34年(1959年)の古今亭志ん生(ビートたけし)から始まった。

まずこの「昭和の志ん生」で3分。

次いでこの時期の田畑政治たちが出てきた。東京へオリムピックを呼べるのか、というお話で2分。

そこから、いきなり明治時代に飛んで、古今亭志ん生の青年時代、本名の美濃部孝蔵(森山未來)が登場してくる。33秒。

そのあと再び田畑政治たちの昭和34年が描かれ(2分)、タイトルバックに入った。

ここまで、くるっくる視点が変わる。