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その力仕事、おまかせあれ! ガテン系ロボット、いざ出動!

ヒューマノイド研究20年の夢が結実!

なぜ「ヒト型」でなければならないのか?

「ヒト型ロボットが大工仕事をしている!」

YouTubeに公開されたある動画がいま、国内外の注目を集めている。人間の形をしたヒューマノイドが、作業台の上に平積みされた石膏ボードから一枚をつかみとり、壁まで運んで立てかけ、片手でそれを押さえながら、もう片方の手で箱からピックアップした電動ドライバーを使って、壁にビス止めしているのだ。

  再生回数105万回超! 世界が驚いたロボットのデモ動画

動画は産業技術総合研究所が昨年の9月27日に公開したもので、4か月後の今年1月29日時点で、再生回数はなんと105万回を超えている。

噂を聞いて、さっそく動画に見入る探検隊員たち。

「たしかにすごい! ロボットが人間みたいに働いている。アシモフが小説に書いたような未来世界が本当に到来するのだろうか!?」

けれども、興奮する隊員たちの心に、どこかひっかかるところもあった。

最近は町中やメディアで、胸にディスプレイを付けたヒト型ロボット「Pepper」など、ヒューマノイドをちらほら見かけるようになった。それらは「コミュニケーション」を主目的に作られたものがほとんど。ヒト型をしているのは人間とコミュニケーションするためと言っていいくらいだ。

一方で、産業用ロボットはそれらとはまったく違う方向で進化している。建設業界でも、災害の復興やオリンピック特需などで作業現場での労働力が求められているが、少子高齢化で人手不足が深刻化していることから、ロボット技術への期待が高まっている。大手ゼネコン各社ではすでに、現場への試験的な導入も始まっている。

しかし、それらはいずれもヒューマノイドではない。溶接作業専用のアームがついていたり、資材搬入のための車輪がついていたりと、人間とは似ても似つかない現場作業に特化されたロボットだ。

「現場仕事をさせるのに、ヒト型である理由はなんだろう。そもそも、ヒト型にこだわる必要があるのだろうか。ヒューマノイドはもう、SFやアニメの世界の中だけのノスタルジーなのでは?」

そんな疑問をぶつけるべく、探検隊は、動画に登場するヒューマノイドの開発者を訪ねてみることにした。

「ヒト型」には理由があった

研究室を訪ねると、そこではまさに、あのヒューマノイドがYouTubeの動画と同じデモを行っている真っ最中だった。石膏ボードを両手に抱えてゆっくりと歩む、黒々としたボディが目に飛び込んでくる。

ヒューマノイドは石膏ボードをモックアップの壁に立てかけたところで、しばらく静止した。動作はしていなくても、ボディから冷却ファンのうなりが響き、“顔”では円筒形のものが絶え間なく回転している──その様子が、どうにも「いま考え中」のように見えてしかたがない。次に何をするか。それを決めるのは“彼自身”……そう思えてくるのだ。

身長182センチ、とやや大柄なヒトサイズの“彼”の名は「HRP-5P」。産総研の前身である通産省工業技術院の時代から、20年かけて研究されてきたヒューマノイド「HRP」シリーズの最新バージョンだ。

開発メンバーの一人として、HRP-5Pの仕事ぶりを厳しい目で見つめている産総研・知能システム研究部門ヒューマノイド研究グループ主任研究員の阪口健さんに、我々はおそるおそる疑問をぶつけてみた。

──仕事の効率を考えたら、ヒト型ではないほうがよくないですか?

「よく言われます。いま見ていただいた、石膏ボードをビス止めする仕事をするのに、5Pは7分もかかってますからね」

意外にも阪口さんは、笑って答えてくれた。「5P」は“彼”の名前の略称だ。しかしそのあと、阪口さんは真顔になってこう続けた。

「だけど、僕らが目指しているのは、建築現場などで特定の仕事がスピーディにできるロボットではありません。実社会に入ってきて、人と一緒に働いたり、人を助けてくれたりできるロボットなんです。

社会のインフラや道具のすべてが、人の身体を前提にデザインされていることを考えれば、そこに入っていきやすいロボットも、必然的にヒト型になるわけです」

【写真】坂口さん
  阪口さん

なるほど、町中を人とロボットがともに、当たり前のように行き交う、そんなSF小説を地で行くような未来を、阪口さんたちは真面目に、しかも正面突破によって、実現させようとしている……ということのようだ。

ならば、阪口さんたちのヒューマノイドは実際にいま、どこまで人間に近づいているのだろう。隊員はさらに質問を続けた。