婚活アプリの「ニセ独身プロフ」は罪に問われるか?弁護士の見解

ポイントはやっぱりココだった
野島 梨恵 プロフィール

同じ「ニセ独身」でも慰謝料に大きな差が

しかし、もっと高い慰謝料を認めた例もある。同じ東京地裁であるが、こちらは、いわゆるお見合いサイト(独身限定)に既婚者である男性が独身と偽って登録し、女性に対して結婚を前提とした交際ができるものと誤信させ、交際していたものの、男性が賭博罪で逮捕されたことをきっかけに妻子がいることがバレ、女性が男性を訴えた、という事案である。

東京地裁はこの事案では、男性に対し慰謝料として250万円の支払いを認めている
クラミジア付きで合計70万の慰謝料の事案と、お見合いサイトで慰謝料250万の事案。この金額の差はなぜなのか。

〔PHOTO〕iStock

後者の事案で利用されたお見合いサイトは、結婚情報センターが運営するインターネットのお見合いサービスサイトであった。このサイトには「ご登録は、結婚相手やまじめな恋愛を探している18歳以上の独身者に限ります」と記載されていた。また会員規約には、サイトの目的として「会員が自己に最も適合性のある配偶者選択を行うにあたり、適合配偶者候補の情報を提供する」と記載され、さらに、「既婚者は会員として登録することができない」との記載もあった。

つまり、サイトの目的は明確に「結婚」であり、会員も「結婚」を希望している人に限っていたのだ。

一方、クラミジア事案のサイトは、「結婚」目的を謳っていない。ただ、既婚者の会員登録とコンテンツ利用を禁止しているだけの、パートナー探しのサイトである。

つまり、お見合いサイトの事案では、当事者は結婚を期待し、結婚を前提とした出会いを探していることが明らかである。結婚に至り得ない出会いは求めていない。ここまで明白にされた「結婚への期待」は保護されるべきであり、故意に期待を抱かせ、裏切った者は償うべきであるといえる。

一方、クラミジア事案のサイトは、交際相手を発見できさえすればいいわけで、「結婚への期待」が交際開始の重要な要素となっていない。この点で、二つの事案は大きく異なる。

 

慰謝料を請求しやすいポイントがある

お見合いサイト事案において裁判所が250万という、比較的高い慰謝料を認容した意味は、この件における「結婚への期待」が法の保護に値するにもかかわらず、既婚者であることを隠して、つまりあらかじめその期待を裏切る気満々で交際を開始し、相手に精神的な苦痛を与えた以上、高い賠償金を支払うべきである、ということであろう。

ポイントは、男性の嘘が既婚/独身という、結婚可否に直結する点に関する嘘である点だ。もしこの嘘が、「学歴」や「勤務先」「収入」などに関するものだったら、話は全く違う。そもそも慰謝料が認められるかどうかも疑問になってくる。

つまり、明確に「結婚」目的の婚活において、既婚/独身という点に関して騙された場合、慰謝料請求は認められやすい。逆にいえば、いわゆる「出会い系」のアプリで、収入や経歴について嘘をつかれていても、高い慰謝料は望めないであろう。