婚活アプリの「ニセ独身プロフ」は罪に問われるか?弁護士の見解

ポイントはやっぱりココだった
先日、婚活アプリで出会ったひとりの男性(27歳)から複数の女性が現金を騙しとられる事件が報じられた。その男性は、複数のイニシャルで登録し、ウソの職業や年収を設定していたという。

職業や年収を偽らないまでも、既婚男性が独身と偽って恋活・婚活アプリに登録するケースも少なくない。そうした虚偽のステイタスは、どこからが犯罪なのか。また、騙された女性は慰謝料を請求することは可能なのか。離婚・男女問題を多く取り扱う弁護士の野島梨恵氏に、マッチングアプリにおける罪と慰謝料のボーダーラインについて教えてもらった。

婚活アプリにウソの経歴や職業を記載して、女性と付き合ったうえで、その女性から金をだまし取ったとして、27歳の男性が逮捕・起訴された。

「婚活アプリ」という騙しのツールは新しいが、職業や経歴を詐称して女性に近づき、カネをだまし取る、という事案自体はきわめて古典的である。

10年ほど前、街コンが流行しだした時も、「街コンで出会った男性に金を貸したとたんに連絡が取れなくなった。勤め先も住所も嘘のようだ。どうしたらいいか」という相談が数多くあった。

経歴や収入の詐称は犯罪なのか

女性からすれば、カネを失ったこともショックだが、その輝かしい経歴に好意を抱いて関係をもった相手が自分を愛していないどころか、単なるカネ目当ての大ウソつきだった……というのが、何よりショックで許せない。そうした女性たちは、憎さ百倍、闘志満々で法律事務所にやってくる。

しかし、経歴や職業を詐称して女性に接近し、関係を持った、というだけでは、何の犯罪にもならない。犯罪になるのは、最初から返す気などないにもかかわらず、「ちょっと困っているから、すぐ返すから、貸してくれ」と言って、女性からカネを巻き上げる行為である。

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相手を騙して、財物や財産上の利益を得てはじめて「詐欺」が成立する。男女関係の絡む詐欺は、結婚詐欺、街コン詐欺、婚活アプリ詐欺など名前は変われど、その内容は「ちょっと貸してくれ」という、いわゆる「寸借詐欺」であり、この場合には刑事事件、つまり逮捕や起訴に結び付き得る。

慰謝料の請求はできる?

それでは、カネ以外の面での怒り、つまり女性側の「経歴・職業など、プロフィールについて騙された」「騙して付き合わせるなんて許せない」という、やり場のない怒りは、民事訴訟、つまり慰謝料請求というかたちで晴らせるのか。

婚活サイトで詐欺にあった! として、女性が男性を訴えた裁判例は、相当数ある。なかでも、独身という話だったのに実は既婚者であった、という事案が多い

 

たとえば東京地裁では、独身者限定の婚活サイトに既婚であるのに独身と偽って登録した男性に騙された女性の事案があった。男性は女性に対して結婚も考えているように期待させて交際を開始し、性交渉を行ったところ、女性にクラミジアを感染させ、交際終了後に既婚者であったことが判明。女性が男性を訴えた、というものだ。

この際、東京地裁は被告に対し、女性に対する損害賠償を命じている。ただし、クラミジア感染に関する慰謝料が30万円、「女性の性的自由の侵害」、つまり、未婚で、結婚も考えると騙して女性を交際、性交渉に至らしめたことに対する慰謝料が40万円、慰謝料合計70万円、という金額であった。この金額、高いと考えるか、低いと考えるか、人によって違うであろう。ちなみに女性が当初請求していた慰謝料は300万円である。