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本社ビルまで売り払って…武田薬品の社員は本当に幸せか

何のために会社があるのかを考える

実直な家族経営が強みだった武田のトップは、外国人プロ経営者に。急激なグローバル化と巨額買収で、会社の雰囲気は様変わりした。これまで武田のために頑張ってきた社員たちは、どんな思いなのか。

幹部はほとんど外国人

大阪・心斎橋から1kmほど北上した中央区の道修町に、武田薬品工業の創業の地はある。まさに「船場のど真ん中」といえる道修町は、武田が1781年に創業する以前から「薬の町」としてにぎわってきた。4丁目1番地には「武田御堂筋ビル」がそびえている。

だが今年、武田薬品は歴史ある地を自ら手放す決断をした。老舗のシンボルともいえる御堂筋ビルを、海外の投資ファンドに売却することが決まったのだ。

「売却した御堂筋ビルは、賃貸に切り替えて引き続きオフィスとして使うことが決定しています。

武田薬品は'18年7月に東京・日本橋に『グローバル本社』ビルを開所し、世界的な拠点とすることを発表しました。大阪本社の名称は残すものの、実際の本社機能は形骸化したといえるでしょう」(全国紙経済部デスク)

ビルの売却により、武田は約380億円を手にする。武田の'17年度連結売上高は1兆7700億円。本来であれば、400億円弱の捻出に本社ビルを差し出すほどには逼迫していない。

だが、少しでもまとまったカネを作らなければ、株主にそっぽを向かれかねない事情がある。昨年製薬業界を大きく揺るがした、総額6兆2000億円という前代未聞の買収劇が尾を引いているからだ。

アイルランド製薬大手・シャイアー社の買収により、武田は日本の老舗製薬会社から、世界十指に食い込むメガファーマへと姿を変えた。主導するのは'15年からCEOの座に就く、クリストフ・ウェバー氏(52歳)だ。

230年続く武田の強みは、秀でた開発力と卓越した営業にある。血の通った家族経営主義があったからこそ、従業員が3万人近い大企業になってもアットホームな社風が受け継がれてきた。

とはいえ、後発医薬品(ジェネリック)の登場もあり、新薬開発競争は激化する一方だ。

 

製薬業界に詳しいサイエンスライターの佐藤健太郎氏はこう語る。

「莫大な研究費と人材が必要なバイオ創薬の時代を迎え、世界のメガファーマは自前の研究員を削減し、代わりに高い技術を持つ企業を買収して成長するビジネスモデルへと転換しました。しかし、武田も買収路線に乗り出したものの、成功しませんでした」

ウェバー氏は、創業家が考えもしなかったようなビジネスライクな手法で武田を作り変えていく。

「彼が社長になってから、社内の雰囲気はガラッと変わってしまいました。経営幹部20人のうち、日本人はわずか4人しかいません。200年以上続く日本企業が、ですよ。

この背景には、長谷川閑史前社長の『挫折』があります。長谷川さんは創業家の武田國男元会長に『日本の良さを残してグローバル化してくれ』と言われ、相次いでM&Aを仕掛けましたがいずれも失敗。

結果、ウェバー氏を招きましたが、彼の改革は武田の理念を完全にひっくり返すものでした。外国人を大量に登用し、日本の優秀な営業や研究者を次々とクビにした」(武田薬品幹部)