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「感動を与えたい」ために旅する若者をおっさんが叱る息苦しい話

「たかが旅行」で社会貢献しなくても

無邪気ゆえに

――【中学生がアメリカ横断】を達成して 同世代に限らず、たくさんの人に勇気や夢を与えたい。

最近、こんなツイッター投稿がネットで炎上したのをご存知だろうか? 見ず知らずの人の家への宿泊を繰り返しながら1人でヒッチハイクでアメリカを横断するという、「中学生」とされる少年の挑戦が、悪い意味で話題になったのである。

彼のSNSアカウントが有名になると、治安や交通事情の悪いアメリカで未成年が無鉄砲な旅をする行為を懸念する、ネットユーザーの意見が殺到した。少年の無謀な行動を止めなかった保護者の、責任感の欠如を非難する意見も目立った(結果、少年はアメリカ横断を途中で中止したとツイッターに投稿している)。

これとほぼ同時に話題になったのが、世界一周旅行中の若い女性とみられる人物だ(以下、「一周女子」と呼ぶ)。

旅行者をターゲットにした性犯罪や強盗が多いインドで、初対面の現地の男性たちから食事をごちそうされたり飲み物を与えられたことを無邪気な文体でSNSに再三発表していた彼女の行動を、イギリス在住の女性評論家が不用意だとして繰り返し批判した。その様子がスクリーンショットの形で広く拡散され、一周女子への批判が多数出たのである。

※アメリカ横断に出発する意気込みを語る中学生とされる人物の投稿(左)。世界一周中の女性の感動レポートに、身も蓋もない実態を伝える女性評論家の投稿(右)。

もっとも、筆者としては彼や彼女の「炎上」原因になった行動については、心のどこかで容認したい気もしている。もちろん、未成年や若い女性の無防備な振る舞いを決して積極的に肯定するわけではないのだが、「そんなもんだよね」とも思うのだ。

 

「イタい振る舞い」をしていた当事者として

なぜなら、筆者自身も20代のときにバックパッカー型の海外個人旅行が好きだったからだ。現在、現地取材が多めの中国ライターという職業に就いて、『さいはての中国』などという本を書いているのも、昔の放浪趣味の延長線上でなんとなくこうなった側面が大きい。

15年ほど昔の恥を書いておけば、インドのアジャンター遺跡で親切にされた現地の人を信用して、農村の土蔵に監禁されかけたことがある。バラナシの安宿でそうと知らずに薬物入りクッキーを食べさせられて、怪しい幻覚に1晩中苦しんだこともあるし、準備無しで3月のチベット高原に行って寒さと高山病で倒れかけたこともある。帰国後にひどい下痢と高熱が出て赤痢感染を疑われ、当時の会社の内定式を欠席したこともある(実際は赤痢ではなくただの体調不良だったが)。

もっとも、筆者は特別な体験をしたわけではない。この手の話は90年代~ゼロ年代ごろの堀田あきおのバックパッカー漫画や流水りんこのインド漫画、小林紀晴の『アジアン・ジャパニーズ』など、さまざまな作品で散々おなじみだからだ。往年、バックパッカーだったおっさんやおばちゃんの諸氏は多かれ少なかれ、筆者と似たような経験の心当たりがあるはずだろう。

※そりゃ、こういう世界に行くのは楽しいですよ。2006年3月、甘孜チベット族自治州にて筆者撮影。

日本がまだ経済大国だった時代には、中国をママチャリで走破するだのインドを和装で巡るだの、何がやりたいんだかよくわからない貧乏旅行をドヤ顔で誇っている変な日本人が世界各地に大勢いた。旅先でドラッグや異性に溺れて沈没する、旅費が尽きて同じ日本人を騙くらかす……、といったダメな話も山ほどあった。

だが、現代の日本は以前と違って、若い人が精神的に未熟な言動をしたり、他者(特に官公庁)に手間や迷惑を掛けかねない行動を少しでもおこなうと、社会的に非常に強い糾弾や制裁を受けてしまう時代だ。

そんな世の中で、若気の至りゆえのイタい振る舞いが(それでも往年のヘンな人たちよりずっとマシだが)、世間の良識ある大人から総出で袋叩きにされた今回の炎上当事者たちに対して、個人的にはちょっと気の毒な気さえするのである。