中国を脅かす巨大なリスク「中国版新幹線」のはてしない無軌道

北京の著名な研究者も警鐘を鳴らした
北村 豊 プロフィール

それでも計画は止まらない

この【4】の中で、趙堅は、「今後も大規模な高速鉄道の建設を継続すれば、それは中国鉄路と地方政府に更なる巨大な債務負担をもたらし、中国経済の灰色のサイと衝突することになるだろう」と述べていた。

それを裏付けるかのように、2018年11月21日付の証券業界紙「上海証券報」は、「国家発展改革委員会が多くの高速鉄道プロジェクトを承認、投資規模は1000億元を超える」と題する記事を掲載した。そこには、一向に衰えない高速鉄道プロジェクトへの投資の中身が詳細に記されている。

(1)近いうちに、中国政府の国家発展改革委員会は「包頭(内モンゴル自治区)-銀川(寧夏回教自治区)路線の銀川-恵農(寧夏回教自治区)区間」、「上海(上海市)-蘇州(江蘇省)-湖州(浙江省)区間」、「重慶(重慶市)-黔江(重慶市)区間」の高速鉄道プロジェクト3件に関するフィージビリティスタディ(FS)を承認する。総延長は529kmであり、総投資額は1032億元(約1兆6820億円)である。

(2)今年の第1から第3四半期までで、国家発展改革委員会は固定資産投資プロジェクト147件、総投資額6977億元(約11兆3725億円)を承認した。また、10月に国家発展改革委員会は固定資産投資プロジェクト9件、総投資額918億元(約1兆4963億円)を承認した。これは今年すでに承認された固定資産投資プロジェクトの規模が8000億元(約13兆400億円)に近いことを意味する。

(3)国家統計局のデータによれば、1月から10月までの全国固定資産投資は前年比5.7%増大しており、その中のインフラ投資は3.7%増大し、増加幅はある程度回復した。10月単月のインフラ投資の増加速度は今年初の反発を示した。記者が中国鉄路から聴取したところでは、今年1月から10月までの全国鉄道固定資産投資の累計完成額は6331億元(約10兆3195億円)で、今年通年で完成予定額の7320億元(約11兆9316億円)までわずか1000億元(約1兆6300億円)まで迫っている。

 

高速鉄道は普通鉄道に比べて建設費用だけでなく、開通後の保守管理費用も割高である。2.9万kmもの高速鉄道を問題なく運行させるために必要な人件費、設備費、消耗品費を考えると、中国鉄路が抱える債務は増大する一方だと思えるし、地方政府の債務も同様だと考えられる。

したがって、上述した趙堅の見解が正しいなら、高速鉄道に「灰色のサイ」が出現する可能性は予断を許さないと思われる。

わずか3130kmの日本の新幹線でさえも採算に問題があるのに、中国の2.9万kmの高速鉄道で採算を取るのは至難の業である。2018年4月末に発表された中国鉄路の「2017年度財務報告」によれば、2017年末の負債総額は4.99兆元(約81.3兆円)で負債率は65%に達したという。

2017年における高速鉄道の乗客数は延べ17.13億人で、総人口を約14億人と考えれば、国民1人当たり高速鉄道に年間1.2回乗車した計算になる。

一方、人口が1.2億人の日本で新幹線の乗客数は延べ3.3億人であることを考えると、国民1人あたり年間2.75回新幹線に乗車したことになり、中国の2倍以上でその差は大きい。

果たして中国の高速鉄道に「灰色のサイ」が出現する日は来るのか。

万一にも出現するようなことになれば、それは中国鉄路に止まらず高速鉄道に多大な投資を行っている地方政府をも巻き込むことになり、その影響は中国を揺るがす甚大なものとなりかねないのである。

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