中小企業の働き方改革にも多く取り組んできた、株式会社ワーク・ライフバランスでパートナーコンサルタントを勤める大塚万紀子氏。大塚氏が語る、「中小企業だからこそできる迅速かつ実践的働き方改革とは――。

2019年4月、約70年ぶりに労働基準法が改正され施行される。5月には新年号が制定され、新たなステージの幕開けが近い。豊富な労働力と安い賃金で支えられ爆発的な発展を遂げた昭和・平成から、少ない労働力でより質の高い仕事で価値を上げることが国際社会においても求められる新たな時代に突入していくことが予想されている。こうした時代の流れは当然、中小企業にも訪れる。この変化を、「我関せず」と見逃したままいくのか、それとも5年後を見据えて今から取り組むのか。両者の差が大きく開くのは自明だ。

とはいえ、中小企業は不安だらけだ。例えば、担当者がいない、費用をかけられない、そもそも忙しすぎてそんなことに回せる時間はない…しかし、逃げてしまったら取り残されるばかり。今、変革するしかない。社会全体の後押しがある今だからこそ、一気に変革できる、ともいえる。

今回は、中小企業を取り巻く働き方改革の流れと、実際に取り組む際のポイントを解説する。

増える中小企業での実践例

近年、首都圏以外の中小企業でも働き方改革が加速している。ここでいくつか事例を紹介しよう。

岩手県にある産業設備の工事や保守を営む信幸プロテック(株)(社員数34名/2019年2月現在)は、「業務が属人化しているので他の人の仕事が分からない」「飛び込み仕事が多く、集中して業務ができない」「問い合わせの回答に時間がかかる」といった課題があった。

これらの課題解決のために、「情報共有」と「業務効率化」に焦点を当てて改革を推進。一人担当から複数担当への変更や、業務移管、手順書の作成など54項目の業務見直しを実施した。

また、後述する朝メール・夜メールの集計により、「見積・請求書の登録作業」など、時間をかけたくない業務にかなりの時間をかけていたことが判明。業務の優先順位づけを実行。社内で勉強会を開くことにより、技術的な質問に、サービスマンでなくても答えられるように知識の共有も実施。このような取り組みの結果、取り組み開始後の半年間で、依頼受付件数が前年より180件増えたにもかかわらず、全社で残業時間の13.2%削減に成功した。

優秀な人材確保も可能に

三重県にある薬局を展開するエムワン(株)(社員数58名/2019年2月現在)の事例もご紹介しよう。

調剤薬局といえば、基本的にお客様から持ち込まれる処方箋に基づき薬を処方する。また、専門職であり接客業でもあるという性質上、薬局のカウンターを無人にするわけにはいかない。そこで、接客対応にすぐに移行できるよう、働き方について考える会議をスタンディング(立ったまま)で行った。

様々なテーマが取り上げられたが、中でも特筆すべきは、売り上げ構成比を変えられないか、というテーマだ。調剤薬局における処方薬の売り上げ構成は一定割合を保っていたものの、その上流には医療機関があり、患者の存在があるため、短期的に売り上げを高めるということが難しい特性がある。そこで、医薬部外品の売り上げ構成比を高めることで、売り上げの総量を上げることができるのでは、という仮説を立て、それに向けて着実に施策を実行した。

この、「現場主体の働き方改革」を2年目からは採用活動にも生かすという方針を取り、積極的に現場の様子を見せ、働き方改革の成果を紹介することで、通常秋ごろまで行ってきた採用活動が、5月にはほぼ終了するという結果にもつながった。また、大企業への就職を希望していた学生も、「調剤薬局はどこも同じに見えたが、働き方についてこれほどまでに考えている企業はなかった。ぜひ就職したい。」と、無事内定につながった。中小企業にとって、優秀な人材の確保は至上命題だ。大きな成果といえるだろう。

このように、大企業だとむしろ時間がかかるような取組みも、中小企業だからこその意思疎通の速さで一気に取組みを進めることができるうえ、売上や利益にも大きくプラスの影響があることがわかる。