「アイヌの人に会ったことがない」という人に伝えたいこと

アイヌを撮り続けたある写真家の気づき
池田 宏 プロフィール

東京で北海道出身の人と出会い、アイヌの撮影をしていることを話すと、決まって「アイヌの人に会ったことない」と言う。悪気があって言っているわけではなく、本当に「会ったことがない」のだろうし、「会おう」と思ったこともないのだろう。2014年、札幌市議がSNSで発した、「アイヌ民族なんて、いまはもういないんですよね。」という無配慮な発言。一体何を見て、そう発言しようと思ったのか。

2016年11月、札幌市〔PHOTO〕Hiroshi Ikeda

北海道、関東に住むアイヌの友人、知人がいる僕にとって、それは理解に苦しむ無知な発言にしか思えなかった。自らの生い立ちや、親、兄弟の話を語ってくれたアイヌの人たちがいる。そして守り抜いてきた彼らの文化伝承を次世代へと引き継いでいこうとしている人たちを僕は知っている。

脈々と繋がる血とは別に、アイヌの人たちの「思い」も確実に受け継がれている。それは僕たちが簡単に理解できる感覚ではない。しかし、アイヌの歴史や文化を知り、多くの生の声を聞くことによって、想像力が生まれるはずだと信じたい。

 

「パパラッチ」から「プロのカメラマン」に

北海道に10年以上通い、アイヌの人たちの撮影を続けることができたのは、たくさんのドラマがあったからだと思う。言い合いになったり、ベロベロになるまで飲んだり、泣いたり、笑ったり。そういうドラマにどんどん魅了されていく自分がいた。

2014年5月、帯広市〔PHOTO〕Hiroshi Ikeda

今回、完成した写真集をお世話になった人たちへと送った。もしかしたら、着物姿で撮影してほしかったと思っている人もいるかもしれない。笑っていない表情や、酔っ払った姿を見て、不快に思う人もいるかもしれない、という心配があった。しかしその心配とは裏腹に、予想外の反応が多かった。

写真展の準備に追われている時に携帯が鳴った。帯広に住む友人からのメールだった。写真集を受け取ったお礼の最後にこう書かれていた。

ヒロシちゃん、ホントにプロのカメラマンなんだって思い知らされた!

ようやくプロと認められたようで、少し嬉しくなった。どこへ行っても異物のような存在だった僕にも、今は少しだけ居場所がある。また友人たちに会いに北海道へと通い続けるだろう。

2008年から2018年にかけて、北海道で暮らすアイヌの血を引く人々の肖像をまとめた写真集。巻末に様々な境遇で生きる現代アイヌ5人のインタビューを収録