「アイヌの人に会ったことがない」という人に伝えたいこと

アイヌを撮り続けたある写真家の気づき
池田 宏 プロフィール

「当たり前のこと」に気づいた

その後も、各地で行われる儀式の日程を調べては、できる限り参加させてもらった。とにかくいろんな町へ行きたい、新しいアイヌの人に出会って撮影がしたいという一心で北海道へと通った。

「今度遊びにおいでよ」と言われたら何百キロでも車を走らせることもざらにあった。ちょうど国内のLCCが就航し始めたこともあり、容易に北海道へと渡ることができるようになった。

帯広では同世代のアイヌの友人に恵まれ、2ヶ月に一度は帯広に行くような生活になっていた。「宏、本当は北海道に住んでんだべ?」とからかわれるほどで、帯広名物、「インデアンカレー」の行きつけの店舗までできてしまった。

2014年9月、帯広市〔PHOTO〕Hiroshi Ikeda

「また来るわ」と言って別れ、翌々月に「飲もうや」と連絡する。次第にアイヌの人たちとの関係が日常に溶け込むようになり、東京に戻ってからもやり取りが続くようになった。北海道へ通うことが楽しくなっていた。

アイヌの人たちを型にはめて撮ることだけは避けようと決めていた。通い始めた当初、アイヌ伝統の着物姿で撮影したことが何度かある。それが悪いとは思わないが、着物姿のアイヌの人ばかりを撮ることはあまりにもステレオタイプな思い込みで、アイヌのイメージをパッケージングした行為だと思った。

仲良くなったアイヌの友人と飲み、(運転)代行で家に帰り泊めてもらう。友人たちは翌朝スーツ、あるいは作業着に着替えて出勤していく。僕がよく知る日常がここにも流れている。その当たり前のことに気がつけたのは、帯広の友人たちのおかげだと思う。

 

受け継がれるのは「血」だけではない

アイヌの写真を見てくれた、大学時代からの友人に言われた言葉が印象的だった。

「写真集の中には、確かにアイヌの人なんだろうなとわかる人もいるけど、自分たちと大して変わらない顔立ちの人もいる。これまでアイヌの人に出会ったことはないと思っていたけど、もしかしたらアイヌの人と日常的にすれ違っているのかもしれないと、これを見て思った」