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ハンブルクの「最新音楽ホール」が予想以上に使い物にならない件

音響デザイナーは日本人なのに…

「全然聞こえないじゃないか」

1月12日、ハンブルクのエルプフィルハーモニーの大ホールで行われた、ヨナス・カウフマンのコンサートで、観客が音楽会の最中に抗議で席を立つ事件があった。

ヨナス・カウフマンは世界的に有名な人気テノール歌手。ハンブルクのエルプフィルハーモニーというのは、2年前に鳴り物入りで完成したホールだ。ドイツでは、ベルリンフィルのホールに次いで賃貸料が高いという。賃貸料が高いということは、コンサートのチケットももちろん高い。

ヨナス・カウフマン〔PHOTO〕gettyimages

その夜、なぜ観客が怒ったかというと、一部の客席で歌手カウフマンの声がほとんど聞こえなかったらしい。そこで、立ち席の方に移動しようとした観客が現れて会場がザワつき、さらに「全然聞こえないじゃないか」と怒鳴って帰ってしまった客までいたというのだ。

クラシックの音楽会にとっては、ザワザワは猛毒に等しく、しかも解毒はほとんど不可能だ。ましてや「ブラボー!」以外で大声を出すなどとは前代未聞。その場の観客全員の心が、取り返しのつかないほど波立ったことは間違いない。

その不穏な雰囲気は歌手やオーケストラの団員にもはっきり伝わるはずで、コンサート自体が台無しになったと思われる。

そのあと、ハンブルガー・アーベントブラット紙のインタビューで、カウフマンは、「エルプフィルハーモニーでもう二度と歌わないとは言い切れないが、今後のコンサートはライスハレで行うということも考えている」と引導を渡した。

ライスハレというのは、やはりハンブルクにある100年以上の歴史を持つホールだ。中に座ると古臭さが心地よく、なんとなくウィーンフィルの学友協会ホールを思い出す。

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実は、ここエルプフィルハーモニーで、この騒動の少し前の12月30日、大晦日、元旦と3日連続、ヨハン・シュトラウスのオペレッタ「こうもり」が上演された。

普通、コンサートホールでオペラやオペレッタといった演目をやるときは、オーケストラの前に歌手が並んで歌うコンチェルタンテと呼ばれる形式が取られる。その場合、舞台装置も演出もなく、つまり歌手は演技しない。コスチュームもつけない。

 

ところが、このときの「こうもり」は、狭い舞台(オーケストラが陣取っているので、あまりスペースが残っていない)はもちろん、上階の客席のスペースや通路まで駆使して、もちろんコスチュームもつけて、堂々たるオペレッタが上演された。

元旦の公演はそのままネットで公開されたが、コンサートホールでのオペレッタ上演というのが斬新だったうえ、歌手も皆、素晴らしく、芝居はうまいわ、アドリブは入るわで、私は自宅で鑑賞しながら大満足だった。

そのあと、ぜひエルプフィルハーモニーに行きたくなり、音楽家の友人を誘ったら、「あそこ、音が良くないみたいよ」とすげない返事。席によって聴きにくいところがある一方、響きがクリア過ぎて、聞こえなくていい音まで聞こえてくるらしい。

「?」と思いつつ、急ぐ話でもないのでそのまま放置したら、数日後にこのカウフマン事件が起こったわけだ。

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