2019.02.27

元経済ヤクザが実体験を明かす「闇社会の住人と銀行の奇妙な関係」

黒い視点を持てば見えてくるものがある
猫組長(菅原潮) プロフィール

黒い視点を持つこと

シティバンク銀行は、取引金額に応じて客をランク付けして管理をしていた。0円で口座を開設して、すぐに千万円単位で預金をする黒い経済人たちは、当然、富裕層として丁重に扱われる。本人確認も少なくとも私たち富裕層に限っては、顔写真の付いていない保険証でも問題とされなかった。

開業してすぐに口座を作った私は、7000万円のキャッシュを持って窓口を訪れた。このキャッシュの出どころは、もちろん黒い。9.11アメリカ同時多発テロ事件の影響で、すでに犯罪資金のマネーロンダリングは国際的な課題となっていて、当時、窓口で200万円以上の現金を預ける時には、金融庁への報告義務があった。

だが、私がシティバンク銀行の窓口で「7000万円を口座に入れたい」と告げると、音もなく行員が寄ってきて「こちらへどうぞ」と別の場所に案内されるのだ。

 

そこにあるのは、すでにガードマンが待機している銀行内にあるATM。すると行員はこう説明した。

「機械なら報告義務はありませんので…」

1回に預け入れができる限度額は200万円ということで、私は持参した札束をバラシて、せっせとATMに突っ込むこととなった。

当然、機械自体の収容能力には限界があるのだが、その瞬間、行員はATMを開けて現金を回収して奥へと運んで行った。その無駄のない、なめらかな一挙手一投足は、この種の作業への習熟の表れだ。こうして7000万円は35回に分けて口座に収められた。

以降、私の顔を見ると、行員は手招きをしてATMへと案内するようになった。

顧客とマネーの出自に「白黒」で色分けしなかったシティバンク銀行は、国内中堅銀行と同程度の4兆円の預金量を持つようになった。一方、その「非差別主義」によって、09年と11年に2回も金融庁から業務停止命令を受けている。

前身である、シティバンク、エヌ・エイ在日支店も含めると、実に3度もの「業務停止命令」を受けるという記録を打ち立てながら、14年、シティバンク銀行は国内個人業務から撤退、譲渡を経て18年に解散した。

あくまで過去の話ではあるが、黒い経済人を丁重に取り扱う金融機関が、これだけ長期間も存在しえたことに私は新鮮な驚きを覚えたものだった。

銀行と聞けばクリーンなイメージを思い浮かべるだろうが、必ずしもキレイごとで動く世界ではないのだ。私自身何度も銀行の「汚れ役」を担ったこともあるし、逆に銀行と組んで黒いマネーを動かしたこともある。

この世界は、清らかな視点だけではわからないことが多くある。ゴーン氏の事件は、黒い視点を持たなければマネーの世界の全容が見えないということを示唆している。アンダーグラウンドに長く身を投じていた私は、引き続きこの世界を「正しく見るための視点」を提供したいと思っている。

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