元経済ヤクザが実体験を明かす「闇社会の住人と銀行の奇妙な関係」

黒い視点を持てば見えてくるものがある

日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン氏(64)が逮捕されてから100日が経過した。「中東日産」を軸にした新たな資金ルートが報じられたものの、目新しい動きは弁護士の辞任と、新しい弁護士の就任くらいだ。

特別背任容疑のもとをたどれば、個人資産の運用の失敗だ。そこで考えたいのが、この事件が提示した「マネーリテラシー」の方向性に対する疑義だ。元経済ヤクザの私が直接経験した、白い視点だけでは決してわかりえない金融の影を明かしたい。

 

黒い経済

ゴーン氏の事件を巡って2月13日には、元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士(63)が辞任し、弘中惇一郎弁護士(73)が弁護人に就いたことが報じられた。

一方で、産経新聞は2月7日に<ゴーン被告が直轄する「CEOリザーブ」という予備費から、子会社「中東日産」(アラブ首長国連邦=UAE)を通じ、オマーン(約35億円)、UAE・ドバイ(約25億円)、レバノン(約17億円)、カタール(約3億円)の販売代理店に資金が支出されていた>と報じ、特捜部が資金の流れを捜査していることを伝えた。

海外にフライトさせたマネーの動きを調査するのには時間がかかる上、弁護側も莫大な資料を精査しなければならない。「無罪請負人」の異名を持つ弘中氏と、特捜部との法廷闘争の開始は、もう少し先ということになるだろう。

さて、今回の事件が、一部上場企業による国際金融を舞台にした経済事件であることは、繰り返し指摘してきた。日本経済事件史でも、類を見ない規模とケースだけに、多くのテーマが提供されていると私は考えている。

そこで今回は、マネーリテラシー(使い方)の方向性を考えたい。

ゴーン氏の特別背任容疑については『元経済ヤクザも驚愕「ゴーン事件、カネの流れから見えて来るもの」』(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59508)で解説した。私が気になるのは、金融機関である新生銀行がこの事件にどう作用したという点だ。

金融は経済の血液や潤滑油と呼ばれるが、マネーの流れの重要なポジションに位置するのが銀行だ。法令の遵守と、健全なマネーリテラシーを求められるがゆえに、銀行業を行うためには、金融庁の免許が必要となる。

だが私は黒い経済界の住人になる前から、銀行が自発的にアンチ・マネーリテラシーに加担する姿を目の当たりにして見てきた。それらの経験がゴーン氏の事件における、銀行の関与に疑念を抱く大きな動機となっている(無論、現時点で新生銀行がどうのこうの、と言いたいわけではないことは先に明示しておく)。

バブル景気の真っただ中、ファイナンスと学業の両立の意味を見出せなかった私は、大学を中退して先輩の興した投資顧問会社に就職する。異常とも言える強い相場にあって、最年長が25歳の4人からなる若くて小さな組織だったが、運用資金は最大130億円近くもあった。だが、90年に入るとバブルは音を立てて崩壊した。

バブルが崩壊すると、銀行は、ありとあらゆる手を使って帳尻を合わせに行った。株の評価額のつり上げもその一つだ。

1億円の評価額の自社株を担保に、2億円借りている企業があるとする。この局面ではこの2億円は不良債権となるはずだが、1億円の評価額の株を3億円で買う客を探してきて買わせるのだ。

1億円の評価額の株を3億円で買う客がどこにいるのか、と思う人が大半だろう。それは、同じく不良債権を抱えた企業や人間だ。「この取引をしてくれれば、あなたの負債は別なところで帳消しにするから」「抱えて倒産してしまえば負債はゼロになるでしょ」――など、追い詰められた人間と銀行をマッチングさせるための殺し文句はいくらでもあった。

担保が必要になる時は、地方の無価値な原野の評価額を無理矢理上げる荒技も横行した。そして、銀行はそうした客を自分たちで探してくるのではなく、私たちに探してこさせるのだ。