小学生をやる気にさせる魔法のテクニック

北島康介、松坂大輔を生んだ名門クラブに学ぶ
セオリー

空振り三振はOK、見逃しは叱りつける

 ジェフ千葉の考えと一見対照的に見えるのは、リトルリーグ江戸川南のやり方だ。

「私は、ある程度ピシッとやらないと気がすまないほうで、厳しく叱ることも度々です。ふだんから、“我慢と思いやり”、“何事も前に出る積極性”の2つに関して、重点を置いて教えています。たとえば、“ベンチ入りの14人から外れてもがんばっている選手こそがえらいんだ、試合に出ている選手は彼らへの思いやりの気持ちを忘れてはいけない”とか、“ベンチ外の選手も我慢して練習をがんばることが重要だ”などと口を酸っぱくして言い聞かせていますね。すると子供は割とわかってくれるのですが・・・・・・」(有安総監督)

 最近は、保護者が「我が子がレギュラー選手に比べて劣っているとは思えない」と意見することが増えてきているそうだ。

「そうした話に対し、保護者の方の理解を求めることに気をつかうチームもありますが、私はそうはしません。私のやり方にご賛同いただけない場合は、退団していただいて結構、というスタンスです。練習にしても、楽しく緩やかにやるチームがあるのもわかっていますが、ウチはキビキビとやる方針を変えません。楽しいのは試合に勝ったときだけ。そのためには我慢する。夢の甲子園に行くためには、つらい練習にも耐えなければならないのです」(有安総監督)

 サッカーと違い、すでに野球は世界トップレベルで活躍する人材を日本から多数輩出している。ならばこれまでのやり方を変える必要はないというのも、もっともな考えだ。

 とはいっても、レールを敷いて子供を型にはめるだけではない。“前に出る積極性”については、次のような話を聞くこともできた。

「空振り三振は許しますが、見逃し三振は怒ります。守備にしても待って捕球するのは許しません。一歩でも前に出ることで、球が顔面に当たる危険が防げるということをわからせてやりたい。また、練習の後片づけを率先してやることも大事です。以上のような指導を通して、最終的には、自ら考えて行動できる子供に育てることができれば、という思いはありますね」(有安総監督)

 キャッチボールが子供の精神面の成長をうながす面もあるという。

「捕球時にしっかり手を添えるなど、基本を怠らない、よいキャッチボールを続けることは重要です。ちょっと気を抜いて暴投したり、キャッチし損なったり、ということがあるのですが、野球ではその1球が命取りになります。社会に出ても、簡単で当たり前のことを正確に当たり前にやり続けるということは、基本的なルールです」(有安総監督)

リレーを取り入れてやる気をアップ

 ジェフ千葉と程度の差こそあれ、やはり将来に向けて子供の主体性を培うことも考慮して、指導しているのである。取材中、「私のやり方は時代に合わないのかもしれません」と何度も述懐した有安総監督。しかし、いち早くJリーグの若年層育成システムに目をつけるなど、決して古いやり方に固執するだけの頑迷な指導者ではない。

 そんな有安総監督に、子供をやる気にさせる魔法のテクニックは何か、聞いてみた。

「たまに褒めることですね。1~2カ月に一度くらいでしょうか。ふだん叱られることの多い子供たちなので、たまに褒められると“なるほどそうか”と思って、やる気が出てくるものなんですよ。“お前ら、やればできるじゃねえか! お前らは顔も頭もいいんだから、やればできるんだよ”という具合です」

 褒めた言葉のあとは「俺も顔は、昔は渡哲也に似ていると言われて、今はキムタクか、なんて言われているけどな」などと、自身をネタにした冗談で、子供たちの笑いを誘うのだという。