小学生をやる気にさせる魔法のテクニック

北島康介、松坂大輔を生んだ名門クラブに学ぶ
セオリー

子供の自立をうながすユニークな指導方針

 サッカー界もJリーグや日本サッカー協会が先頭に立ち、子供に教えることに力を入れている。

池上正(いけがみ・ただし)
1956年大阪府生まれ。大阪体育大学卒業。1981年の滋賀国体、翌年の栃木国体に大阪代表として出場。2002年、ジェフユナイテッド市原とコーチ契約、「サッカーおとどけ隊」結成と同時に隊長となる 〔PHOTO〕中村將一

 Jリーグでは、J1・J2問わずプロクラブにユースチーム(高校年代)、ジュニアユースチーム(中学年代)の設立を義務づけている。

 また、ユース・ジュニアユースで蓄積したノウハウを元に、小学生向けのサッカースクールを展開するJリーグクラブも少なくない。

 ジェフユナイテッド市原・千葉(ジェフ千葉)の「サッカーおとどけ隊」もそうしたスクールの一つで、専属コーチ陣が、地域のサッカーチームの練習や、近隣の幼稚園や保育園、小学校の体育の授業に出向きトレーニングを行う。

「2002年の秋から、地域貢献活動の一環としてスタートさせました。サッカースクールなどを開いたこともあるのですが、200人ほど集まったとして、そのほとんどが自ら集まる意欲をもったリピーターばかりだったのです。これでは真の地域貢献にならないし、選手層の拡大にもならない。ならばこちらから出ていこう、ということで、『おとどけ隊』という形式をとったわけです」

 そう語るのは「サッカーおとどけ隊」隊長の池上正さん。その指導の方針は非常にユニークで、子供の自立をうながす教育的な側面もあり、高い評価を受けている。

池上氏はサッカーの技術を教えることよりも、スポーツの楽しさを伝えることを目指している。
写真/JEF UNITED

「ボールを使わないトレーニングや、一見サッカーの技術に直結しない練習なども多いので、次第にサッカーチームより小学校のほうから呼ばれることが多くなりました。やっている側としても、運動嫌いの子やサッカーをはじめてやったという子を教えることの意義は大きいなと感じています。現在では、ほぼ毎日、3チームに分かれて、学校関係だけでおよそ年間190校、延べ6万人の子供たちを教えています。市原市教育委員会から公的な事業として契約していただき、予算をいただけるようにもなりました」(池上氏)

目標は甲子園に出られる選手の育成

有安信吾(ありやす・しんご)
1941年東京生まれ。中学時代は、陸上、水泳、野球をこなすなどスポーツ万能。我が子がリトルリーグに入ったことをきっかけに、子供の指導の世界へ。その後、自らチームを立ち上げ「江戸川南」総監督となる

 リトルリーグチーム「江戸川南」は、有安総監督ら3人の有志により1984年に創設。今日に至るまで、全日本選手権優勝2回、全国選抜大会優勝4回、2008年には米で行われたリトルリーグ・ワールドシリーズで3位と、輝かしい実績を誇る強豪として知られる。

「当時、江戸川地区は北部にしかリトルリーグがなかったのですが、南部にもリーグをつくろうという話になり、私とほか2名の方が出資して、運営にあたることになりました」(有安総監督)

 チームは、小学生のリトルマイナー、リトルオールスター、中学生のリトルシニアの3チームで構成され、在籍する選手の数は総計で100人ほど。

 目標の一つが、「甲子園に出場できる選手を育てること」であり、卒団生の進学先には、国士舘や日大三、早稲田実業、千葉商大付属など、野球の名門校の名前がずらりと並ぶ。

「最近は、また野球をやる子が増えてきたのですが、野球界のあり方には危機感を持っています。サッカーの組織的な選手育成システムについてJリーグが開幕するときに知り、衝撃を受けたのですが、野球界も取り入れるべきではないかと。プロだアマだといっている場合ではありません。また、日本野球機構やプロ野球チームのフロントなど野球を運営するトップ層に、もっと若手を積極的に入れるべきだと思っています」(有安総監督)